日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #08
日産、木村拓哉さん起用から考えるアンバサダー論。“やっちゃえ”と“ぶっちぎれ”の狭間で
海外でのブランドアンバサダー的な起用例は?
最近では、NIKEが「Just do it 30周年」で顔として起用したコリン・キャパニックの例がありますが、この事例の内容は連載内ですでに紹介しているので、ここでは別の事例をご紹介します。
カンヌライオンズ2015のサイバー部門グランプリ『I will what I want
(アンダーアーマー)』です。
アンダーアーマー(UnderArmour)は、当時米国で売上3位のスポーツブランド。男性イメージが強く、女性顧客の獲得を目指していました。メッセージは、I will what I want。誰が何と言おうが、私は私のやりたいことをやる、といった内容です。
そのメッセージを伝える役割として選ばれたのが、“最もギャラが高い”として有名なスーパーモデルのジゼル・ブンチェン。綺麗だけど、スポーツとは程遠いイメージがありました。
ジゼルとアンダーアーマーの契約が発表されると、SNS上には、“ただのモデルがスポーツできるの?”“素直にモデルをやってればいいんだよ”といった痛烈な批判投稿が溢れました。
中心施策となったWeb動画は、真っ白な壁に囲まれた部屋で、このジゼルがサンドバッグ相手にひたすらトレーニングに励むというもの。サンドバッグを蹴ったり殴ったりする音と、彼女の荒い息遣いしか聞こえません。
その間、壁に映し出されるのは、激しい批判投稿の数々。そうした周囲の雑音には目もくれず、彼女はひたすらトレーニングに励みます。まさにメッセージの通り「誰が何と言おうが、私は私のやりたいことをやって」いるわけです。
- Web動画
- 事例ビデオ
このキャンペーン後、アンダーアーマーは売上を28%アップさせ、アディダスを抜いてナイキに次ぐ2位に躍り出ます。ブランドのメッセージを、ギゼルというアンバサダー的なスーパーモデルを起用することでみごとに伝え切った好例だと言えるでしょう。
著名人のアンバサダー起用は、効果的に活用することができれば、ブランドのシェアを盛り返すことさえできるのですね。
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