音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #19
コロナ禍のマーケティング、変わるものと、変わらないもの【音部で壁打ち】
【質問】
新型コロナウイルスの感染拡大を経て、経済全般に大きな影響が出ています。今回の騒動を経て、マーケティングは、どう変わると考えていますか?または、変わりませんか?
自然発生的に「属性の重要度」の遷移が起きる
市場の創造や再創造をする、つまり「いい洗剤」や「いい自動車」などのように、「いい商品」を新たに提案し変えていく、というマーケテイングの本質は変わらないでしょう。そして、「いい商品」の新しい提案は、属性(自動車であれば、「スタイルが流麗」や「燃費がいい」などといった諸属性が考えられます)の重要度の変化を通してもたらされます。
平時では、この属性の重要度の遷移のほとんどは、マーケターが提案し消費者が了承するというプロセスを経てなされます。これがマーケティング部門やその機能が市場創造を担うことにつながっていますし、消費者理解をする意義でもあります。この場合は、マーケターが一方的に主張しても、消費者が受け入れなければ新たな市場は創造されません。ところが、今回のコロナ禍や震災、恐慌などといった非常時、つまり外的環境の劇的な変化が起きると、マーケターの提案も消費者の了承もなく、自然発生的かつ強制的に属性の重要度が変化することがあります。
「移動規制が掛かる」や「イベントが休止になる」などの物理的な制限による直接的な損害に加えて、「いい商品」の定義の変化がビジネスに思わぬダメージを与えたり、想定外の成長につながったりしているかもしれません。
例えば、画面越しの会話や、機械に指で触れずに音声でコントロールするなど「人との直接的・間接的な接触を避けられる」というベネフィットを提供できれば、「いい商品」を定義し直す新しい属性として確立されそうです。抗菌・抗ウイルスも多様な領域で、普遍的に重要な属性になるでしょう。免疫を強くするといった属性も可能性が高そうです。
最初のうちは、こうした新しい属性は差別化の要因になるかもしれませんが、普及すると衛生要因(ないと困るけど、あることが普通の要素)になっていくと思われます。