RYUKYU note #06後編
沖縄「カヌチャリゾート」が、空港から離れていても人気を集めた独自戦略
2020/11/20
沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来の成長に繋がるストーリーをひも解いていきます。
第6回は、沖縄の人気リゾート地として常に上位にランクインする「カヌチャリゾート」を運営する、カヌチャベイリゾートの代表取締役社長 白石武博氏。観光客の入口である那覇空港や、万座やオクマといった西海岸のリゾート地から離れた場所にありながら、リピーターに支持されるエリアに成長した背景や戦略を聞きました(前編は、こちら)。
第6回は、沖縄の人気リゾート地として常に上位にランクインする「カヌチャリゾート」を運営する、カヌチャベイリゾートの代表取締役社長 白石武博氏。観光客の入口である那覇空港や、万座やオクマといった西海岸のリゾート地から離れた場所にありながら、リピーターに支持されるエリアに成長した背景や戦略を聞きました(前編は、こちら)。
西海岸のリゾート地と正反対の設計で差別化
――オープン当初、カヌチャリゾートは那覇空港からも遠く、決して良い立地とは言えなかったと思いますが、集客のために、どんな戦略をとったのでしょうか。
当時の沖縄のリゾート地と言えば、西海岸の万座やオクマが中心です。JALやANAなどの航空会社が競ってキャンペーンを打ってくれた結果、沖縄ブームが起きていました。そのときに生まれたのが、いわゆる都市型ホテルをビーチサイドに置いて、多くの人を集客することで、高いパフォーマンスを創出するというビジネスモデルでした。
ただ、西海岸のリゾートは那覇空港から1時間弱の距離にある一方で、カヌチャは東海岸で遠い。西海岸と同じものをつくっては絶対に勝てないため、差別化の必要性を感じていました。
カヌチャの特徴のひとつは、街の形状をしていること。もうひとつは、東海岸であることです。そこで、これらの特徴を長所と捉え、ブルーオーシャンを狙う戦略を立てました。お客さま全員に好かれる必要はなく、「2:8の法則(パレートの法則)」でいう、2割のお客さまに喜ばれるリゾートをつくることを決意したんです。
――どのように差別化していったのですか。
まずは、部屋のつくりから変えました。万座などのホテルにおける部屋の広さの平均が29平米だったので、当社は65平米、テラスも含めれば100平米になるように設計しました。西海岸では、とても真似できないような広さです。
また、私はホテルの部屋では靴を脱いで裸足で歩き回るので、お客さまも気兼ねなく靴を脱げるようにフローリングにしたり、風呂とトイレを分けたりする設計にしました。このように当時のスタンダードとは真逆のことをしていったんです。
しかし、当時その設計では無駄が増えて効率が悪いということで、ホテルのコンサルタントとは、ことごとく衝突しました。結果、ホテル経験者の多くが辞めていきました。
でも、彼らの意見を聞いていては、西海岸には勝てない。そう確信していたため、ぶれることはありませんでしたし、それが今でもカヌチャが生き残っている理由だと思っています。
――違うことをやるという発想は、どこから生まれたのですか?
変わったことばかりしていますよね(笑)。私はホテル屋ではなく、言わば、“街屋”なんです。例えば、3年前に始めた紅茶の栽培も、もともとは周辺の耕作地を価値あるものに変えるために始めたものです。
紅茶の専門家の先生から「個人の所得がある一定以上あがると、コーヒーを飲んでいた人が紅茶を飲み始める」というアドバイスをもらって、紅茶の質を磨いて、単価の高いお客さまに来てもらおうと思ったんです。さらに、お茶の収穫という体験を商品として販売できるし、うまくいけば名産品として販売できると考えています。
――街屋という考え方は、ユニークですね。もともと、そういう考えを持っていたのですか?
はい、沖縄を活性化させたいという想いを持っています。自らの手で沖縄の課題を解決できる人生でありたいんです。カヌチャでうまくいったことを他でも真似してもらい、やがて沖縄全体を良くしたいと思っています。