トップマーケターが語る2021年の展望 #02

片山義丈、小和田みどり、鈴木健、鈴木康弘―トップマーケターが語る2021年の展望②

前回の記事:
足立光、伊東正明、奥谷孝司、音部大輔―トップマーケターが語る2021年の展望①
 新型コロナウイルスの感染拡大が私たちの生活に大きな影響を与えています。2021年はそうした変化にどう対応していくべきでしょうか。トップマーケターが「2021年の展望」を語ります。
 

「変化すること」と「変化しないこと」の見極めが必要


片山義丈
ダイキン工業 総務部広告宣伝グループ長 部長

 コロナによって生まれた変化は、「今まで思いもよらなかった変化」ではありません。誰もがいずれは実現すると予測していた変化が、前倒しで到来しただけです。本来は、5~10年かかるはずの事柄の多くが1年で変化してしまいました。この変化は急速すぎる懸念があります。人間は、変化を好まない生き物であり、大きな変化には過剰に反応してしまいがちだからです。「コロナ前に完全に逆戻り」するのは問題外ではありますが、「劇的な変化」が生活者にとっての「当たり前のこと」と考えるのも、過剰な反応といえます。コロナによって変化した事柄の中から、変化を是として「時計の針を進めないといけないこと」と、あえて「時計の針を少し戻す」ことの見極めが必要な年になると考えています。
 

社会課題と事業成長を両輪で回していくことが重要に


小和田みどり
ライオン CSV推進部(サステナビリティ推進部に変更)部長

 企業やブランドのパーパスは社会課題の解決であることがほとんどです。今まで社会課題と事業の成長は別物とされていましたが、これからはその両輪を回すことがより重要になってくると考えます。サステナブルな企業、ブランドであるために、一層存在意義を際立たせた活動へとシフトしていきたいと思っています。
 

非接触を叶える「移動を伴わない体験価値の多様化」が重要に


鈴木健
ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクター

 コロナ禍で試されたのは、非接触を前提とすると、これまでの都市機能の中央集権的な軸が狂ってしまったことです。オンラインやモビリティ経済とは、そのような軸を前提とした便利さとコスト効率を目指していたので、そうしたこれまでのルールを決めていた軸を見直すことがまずは大前提にあるでしょう。

 デジタル化やモビリティが依然重要なのは間違いないのですが、それは違う目的を目指すことになると言えます。つまり、非接触を前提とした人との関係性や交通で、逆に言えばそれだけ「人」同士の直接的な関係性の価値が増すことになります。デジタルとモビリティはその延長線上で活用されるため、ブランドにおいてはオムニチャネル統合による便益の向上、移動を伴わない体験価値の多様化(デジタルとオフラインのハイブリッド)などが重要になると言えます。それができれば、仮にコロナ禍がおさまっても、デジタルトランスフォーメーションが主軸になる今後において、高効率なビジネスにしていくことが可能だと思います。
 

本格的にDXに取り組むための基礎づくりに集中せよ


鈴木 康弘
デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長

 2021年は昨年に引き続き厳しい消費環境が続き、回復は早くても年の後半、遅い場合には2022年前半となるでしょう。昨年はDXに取り組む企業も増加し、今年もその流れが継続していくと予測されるが、より取り組みの中身が問われるようになるでしょう。DXはデジタルを活用した、自社のビジネスモデル・社風の転換です。そのため、単なるデジタル化と考え外部企業に丸投げしている企業は失速し、本質的な企業変革と考え、自社で主体的に取り組む企業は成果をあげていくでしょう。2021年はその企業変革を目指す基礎をしっかりと作り上げることに集中すべきです。その中でマーケターは将来の自社のイメージを経営から現場、あらゆる部門を巻き込む大切な役割を担って欲しいと思います
続きの記事:
世耕石弘、田岡敬、田部正樹、富永朋信―トップマーケターが語る2021年の展望③

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