日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #12

ブランド訴求しながらゴリゴリのサービス情報も。UQモバイルに代表される日本独自のCM手法とは?

 

“締めのコピー”とコンセプトの展開で、ブランディングに絞ってシリーズ化する欧米型


 欧米の広告にシリーズ化されるものがないかと問われれば、そんなことはないのだが、そのやり方がだいぶ違っている。欧米では、コンセプトに沿って日本とは異なる意味合いのシリーズ化が展開される。具体的には、タグラインと呼ばれる締めのコピーに着地するように企画が練られて行く。

 ここでは、UQと同じ携帯キャリアであるT-mobileという会社の事例を紹介しよう。タグラインは「Life’s for sharing(分かち合うべき毎日)」で、シリーズ化の手法は、「思わずシェアしたくなるようなイベントをパブリックな場で行い撮影して動画化する」というものだ。

 始まりは、2009年にカンヌライオンズのフィルム部門ゴールド他を受賞した「Dance」。ロンドンのターミナル駅の朝、多くの通勤客が行きかう中で、数人が突然踊り出す。ダンスの輪は次々に広がり、最終的には200人を超える。この不思議なイベントを、携帯電話で撮影して、メールで知人に送る通りがかった人々。最後には、締めのタグライン「Life’s for sharing(分かち合うべき毎日)」があらわれる。こうした分かち合うべき毎日に相応しいのはT-mobileだ、というブランディング的なメッセージで、割引情報などは一切出て来ない。

 このタグラインを使用し、同様の手法を取る動画は、この後しばらく続くのだが、UQのような直接的なシリーズの枠組みは設けず、あくまでもコンセプトの展開となっている。

 例えば、トラフォルガー広場の巨大なスクリーンにビートルズの有名曲「Hey Jude」のカラオケと大量のマイクを用意し、1万3500人もの人が大合唱する「Sing-along」や、ヒースロー空港で帰国する人に向けて驚きの音楽パフォーマンスを仕掛ける「Welcome Back」などだ。
 
 
 

 UQモバイルを始めとしてauもトライも大変なオンエア量があり、毎日のようにこの手法のCMを見ているが、僕が知る限り、この3つのCMは同じクリエイティブ・ディレクターが手掛けている。日本独自とも言えるこの手法が、今後さらに広範に定着して行くのかどうか、注目していきたい。
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