RYUKYU note #08前編
沖縄の人気観光施設「おきなわワールド」は、どのように誕生したのか。南都 大城宗直社長インタビュー
2021/02/09
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沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来に繋がるストーリーをひも解いていきます。
第8回は、自然を活用した観光施設「おきなわワールド」などを経営する南都の代表取締役社長 大城宗直氏。同じく自然を生かした「大石林山」や「ガンガラーの谷」のほか、レストランや酒造、お土産の販売など順調に事業を拡大してきた大城氏に、マーケティング手法や事業を展開する上で大切にしてきたことなどを聞きました。
第8回は、自然を活用した観光施設「おきなわワールド」などを経営する南都の代表取締役社長 大城宗直氏。同じく自然を生かした「大石林山」や「ガンガラーの谷」のほか、レストランや酒造、お土産の販売など順調に事業を拡大してきた大城氏に、マーケティング手法や事業を展開する上で大切にしてきたことなどを聞きました。
沖縄の自然や文化をアピールしたいと構想
――南都は、鍾乳洞の「玉泉洞」を中心とする観光施設の「おきなわワールド」をはじめ、国立公園の「大石林山」や、豊かな自然が体験できる「ガンガラーの谷」など、さまざまな事業を展開しています。最初に事業を立ち上げたきっかけは、何だったのでしょうか。
南都を創業したのは私の父で現会長です。沖縄で戦争の遺族団として遺骨収集をしていた際に「玉泉洞」と出会ったと聞いています。沖縄には鍾乳洞が点在しているのですが、全長約5㎞という規模やあれほどの美しさを誇る鍾乳洞は珍しい。そこで、沖縄戦の激戦地でもあった南部に観光資源を磨き上げ、明るい光を当てていきたいという思いから、玉泉洞の開発を始めたんです。
他県の鍾乳洞施設を見ると、観光客が減少していたため、鍾乳洞だけでなく沖縄独自の文化や伝統芸能もあわせてアピールできる施設にしようという構想が生まれました。実現までには10年以上かかりましたが、1972年に玉泉洞部分を開園、1996年のリニューアルオープンでようやく現在の「おきなわワールド」になりました。
当社の特徴は、すべて沖縄の自然を活用した事業であることです。売上をつくっていくために飲食事業や酒造事業、おみやげ事業なども手掛けてきましたが、事業の根底には自然の保全ルールをしっかり守りながら、そのすばらしさを広めていきたいという思いがあります。そういう意味では、少し珍しい会社かもしれませんね。
全社を上げて、全国の旅行会社の支店を行脚
――1972年に鍾乳洞を観光地化してから、どのように観光名所としての認知を広げていったのでしょうか。
創業メンバーが、全国の旅行会社を隅々まで回ってPRしていきました。昔は各支店で旅行商品を企画していたので、沖縄を取り上げてもらえるよう、まさに全国を駆け巡っていましたね。
当時の沖縄が他県と異なっていた点は、島嶼(とうしょ)県という事情もあり旅行会社主体の団体型旅行がほぼ100%だったこと。当時はレンタカー店も少なく団体のバス旅行が主流で、慰霊観光や新婚旅行など航空会社の支援を得ながら実現し、その戦略的な観光振興が大きな発展につながりました。
玉泉洞に関しては、国鉄(現JR)が実施した沖縄のPRキャンペーンでポスターの題材として採用されたことも、大きな刺激になりましたね。電車の通っていない沖縄で国鉄によるPRは、今ではあり得ない話ですが、日本に復帰したばかりの時期だったため「帰ってきた沖縄」というキャッチフレーズで、ポスターが全国に掲出されたんです。
ほかにも、玉泉洞の次に「ハブ博物公園」を開園するなど、さまざまな展開を行ってきたことも認知拡大につながりました。ハブ博物公園は、沖縄にハブという独自の生態があったことから、ハブの研究所とともにいろいろな観光資源の開発をしていくために開設しました。そこからハブ酒や健康食品のハブ粉が生まれ、南都酒造所やレストランなども併設していき、その度にPRやキャンペーンを行いました。ハブ酒は、今でも我われが市場シェアの8割を占めていますね。
――ハブ酒は主に観光客の方が買われるのですか。
沖縄の人はあまり飲まないので、結論から言えば、そうでしょうね。ただ、最近は沖縄でも少し流行っていて、居酒屋にショットで売られています。私たちもさらに伸ばせるように仕掛けているところです。ハブ酒は体に良く、味もおいしいので、実は健康志向の女性のリピーターが非常に多いんです。私もよく風邪の引き始めにお湯割りで飲んでいます。