日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #13
東京都の「外出自粛」投稿、背景の広告が話題に。応援者として振る舞った明治R-1の秀逸企画
ユーモアたっぷりに「世界を救うために、ビールを飲もう!」
商品やブランドが、何かの応援者として振る舞うことで、人気を博した広告事例は海外でも見受けられる。筆者の頭に浮かんだのは、2016年のカンヌライオンズでアウトドア部門のグランプリを受賞した施策、ニュージーランドのハイネケン社(商品名はDB EXPORT)による「Brewtroleum(ブルートゥローリアム)」だ。
6カ月にも及ぶ研究開発の末、「DB EXPORT」というビールを生産する際に地球環境に優しいバイオ燃料の生成に成功、ブルートゥローリアムと名付けた。同社は、このバイオ燃料スタンドを全国62カ所につくり、広告や店頭で「このバイオ燃料を枯渇させないために、DB EXPORTを飲もう」というメッセージを発信した。その結果、ビール全体の消費量が6%減少する中、この商品の売上は過去に例のない10%増を記録したという。
このビールの味わいや飲み心地、飲料シチュエーションをメッセージするのではなく、地球環境を気にする人の“応援者”として振る舞い、それをバイオ燃料提供という実態のある形にすることで、注目と支持を集めたのだ。
事例ビデオでも、飲みに出かけようとする男性が、奥さんからとがめられるような調子で「どこに行くの?」と聞かれて、「世界を救いにいく」とドヤ顔で答えるシーンが描かれている。ビール好きのインサイトを見事に捉えた、いわば“ユーモラスなソーシャルグッド”と言える施策だ。
気になるのは、これだけ大掛かりな施策をした費用に関してだが、それについては事例ビデオなどでも触れられていない。しかし、従来の方法でマスメディアを大量に使用した場合と比べて、費用対効果の点でけっして劣っていなかったのではないかと推測される。
英語圏ではAd Avoidance(アド・アボイダンス)と呼ばれる「広告回避行動」は、日本でも広く見られる。少なくても“いかにも”な広告臭い表現では、なかなか注目は集められない。こんな時代には、「商品やブランドを、何かや誰かの応援者として位置づける」というスタンスが、ますます重要になってきそうだ。
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