音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #番外編「読書企画2」
太平洋戦争の将校から、現代のマーケターが学べる戦略論【音部で壁打ち】
学習意欲が高まる春、マーケティングに役立つ本を探している人も多いでしょう。今回は、音部で「壁打ち」の番外編として、音部さんに「新米・中堅マーケター」にオススメの書籍を聞きました。前回の「新米マーケターへのオススメの一冊」に続いて、「中堅マーケターにオススメの1冊」を紹介します。
ブランドマネジャーに多くのヒントを与える1冊
【質問】
中堅マーケターが読むべき1冊を教えてください?
よくある太平洋戦争の戦記物かと思っていましたが、参謀将校のきわめて鋭利な思考がつまびらかにされている良書です。日本陸軍というと、スマートで洗練された海軍に対して、泥臭くて時代遅れの突撃ばかり繰り返していたイメージがありますが、事実とはいささか異なることもわかります。
かなりストレートな戦史物なので、好みと趣味が分かれるところですが、競合のブランドマネジャーを相手に、虚々実々のやり取りを日々の仕事としているブランドマネジャーたちには、考え方のヒントがたくさんあることでしょう。考えるとはこういうことで、戦略を練るとはこういうことだと分かります。
とくに情報の取り方については、社内、社外、そして消費者からどのように情報を受け取るか、学ぶべきことがたくさんあることでしょう。たとえば前半に、著書の養父で陸軍航空本部長なども努めた陸軍中将の堀丈夫(海軍や陸軍の指揮下ではなく、航空部隊独立の必要を説いた偉才でもある)に聞く次の一節は、現代のマーケターにとっても示唆に富む訓示であると思います。
”情報は結局、相手がなにを考えているか探る仕事だ。だが、そう簡単にお前たちの前に心の中を見せてはくれない。しかし、心は見せないが仕草は見せる。その仕草にも本物と偽物とがある。それらを十分に集めたり点検したりして、これが相手の意中だと判断を下す。相手といっても第一線の指揮官には、自分の正面の敵の指揮官になるし、大本営だったら国家の主権の中枢が相手ということになろう。主権の中枢から直接聞くことができたら一番良いが、それは至難であって、ときには嘘もつかれる。そうなると、いろいろ各場面で現れる仕草を集めて、それを通して判断する以外にはないようだな”
仕草とは、軍隊用語で言う「兆候」のことです。マーケティングでは、観察できる消費者の行動や、実行に移された会社の意思決定などが仕草ということになるでしょう。
もし、拙著『なぜ「戦略」で差がつくのか。』をお読みいただいていれば、本書に登場する様々な状況や戦局の記述について「目的」と「資源」の2つの視点で読み解いてみてください。
敵の動きをよく読んだ戦い方から、米軍に大いに畏怖された堀栄三少佐の洞察と考察を、理解しやすくなるかもしれません。
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