マーケターズロード 鹿毛康司 #07

鹿毛康司―ひとりの人間として、お客さまと向き合う「ファンと呼ばない」ファンベースドマーケティング

 

人として話すことが重要


 企業によってはブランド毀損になるから個人が前に出てはいけないというルールがあると思います。ただ、私も花子も思いきり個人の人格で活動をしていきました。

 彼らと直接触れ合い、「はじめまして」「こんにちは」「元気?」なんて挨拶を交わす機会を設けたいと、滋賀県草津市の琵琶湖畔で催される西日本最大級の野外音楽イベント「イナズマロックフェス」に、2017年から継続して協賛しています。





 私と花子がTwitterで「うちわさしあげます、よかったら来て下さい」と呼びかけると2日で3千人以上の人たちが私たちのテントに遊びに来てくれました。「花子さーん」「ぶちょー(私の呼び名)」と昔から知っているかのように声をかけてくれます。

 地元から持ってきたお菓子やらビールやら、手づくりの消臭力の時計などをプレゼントしてくれて、段ボール3箱になりました。みんな私たちのことを遠くの人とも思っていないし、上の人とも思っていません。

 「お中元には、消臭力を配ってるよ」だとか「会社の備品は全部エステー商品にしたよ」と声をかけてくれます。何が正解なのかはわかりませんが、ブランド毀損をしていないことだけは確かです。
 

お客さまの「ありがとう」の総量が売上になる。


 マーケティングをやっていると、たとえば「属性」でお客さまを「塊(かたまり)」で見たりして、とても無機質な存在に扱うことがあります。私も時々そうなりかけます。

 でも、Twitterのフォロワーさんや特命宣伝部員という生身の仲間と交流することで立ち止まれるのです。彼らは私にとって大切な宝なのです。

 私は、その昔、マーケティングの手法やフレームワークを使えば世の中を動かせるという大変な勘違い男でした。特に自分が米国でMBAの勉強をして帰国した時は、思い出すだけでも恥ずかしい限りのダメマーケターでした。

 以前(参照:#2 ひとりの人として、お客さまと向き合う原点になった雪印時代―鹿毛康司)も書きましたが、前職時代の痛い経験が私に気がつかせてくれました。

 「企業はお客さまに喜んでもらって、はじめて存続できる」

 お客さまは喜んでくれるから、その代金としてお金を払ってくれる。その総量が売上だと思っています。マーケティングを実践していく上で、一番重要なのはお客さまの「心」を理解することだと痛感しています。

 それもお客さまも気がついていない心、インサイトを導き出すことこそが重要だと思っています。振り返るとお客さまが応援してくれたときには、必ず私はインサイトを導き出していました。そうでない場合は失敗をしています。

 ところが、その手法は確立されているようで、まだまだブラックボックスの領域です。勘だとかセンスで片付けられる時さえあります。そこで、次回は私なりのインサイトの導き方をお話してみたいと思います。

 5月20日に書籍「『心』が分かればモノが売れる」が出版されます。インサイトのことをちゃんと書きました。よかったらご参考にしてください。私の大尊敬する糸井重里様も推薦していただきました。糸井さんの帯の言葉がこの本の全てのような気がしています。
 

 糸井重里推薦
 いちばん謎なのはじぶんである。
 いちばん親しいのはじぶんである。
 だったら、じぶんと語りあおう。


 私と糸井さんとのつながりについては、こちら(参照:#3 鹿毛康司の人生を変えた人、糸井重里、鈴木喬。)をご覧ください。
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