RYUKYU note #11前編

串カツ田中にブランド譲渡で注目、沖縄・みたのクリエイトのコロナに打ち勝つ「経営戦略」

前回の記事:
沖縄人気店「ステーキハウス88」、コロナ禍を乗り切る強みとは?
 沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来に繋がるストーリーをひも解いていきます。

第11回は、沖縄を中心に飲食店や店舗デザイン、メニュー立案などのクリエイティブを企画する、みたのクリエイトの代表取締役社長 田野治樹氏が登場。2016年にオープンした飲食店「鳥と卵の専門店 鳥玉」の沖縄県外での展開について、2020年に大手居酒屋チェーンの串カツ田中ホールディングスにブランド譲渡したことで注目を集めました。この提携の背景はじめ、田野氏がコロナ禍で描く経営戦略について詳しく、お話をうかがいました。
 

居酒屋業態から、非アルコール業態に舵を切った理由

田野治樹氏
みたのクリエイトの代表取締役社長
――みたのクリエイトは、もともと居酒屋業態を中心としてきましたが、2018年に「目利きの銀次」「いぶし銀次郎」など、「銀次」関連など多数の外食店舗を別会社に事業譲渡し、現在は非アルコール業態の「鳥と卵の専門店 鳥玉」を経営の柱のひとつとされています。現在の居酒屋市場について、どのように分析しているのでしょうか。

 居酒屋の流行り廃りのサイクルは10年に1回訪れています。現在は大衆酒場が人気ですが、その前はバル、さらにその前は産地直送や漁港直送、もっと前を遡れば、おしゃれ居酒屋、個室居酒屋が注目されるなど、時代による変遷があります。そこで、どんなコンセプトの居酒屋も必ず廃れるときが来るということが分かっていました。

 流行りに合わせて店舗を変えることもできますが、そのためには投資をしなければなりません。下手すれば、1店舗につき1億円くらいかかることもあります。だから、居酒屋を経営の中心としたままでは、危ういと考えていました。

 一方で、居酒屋ではない飲食業態、たとえばカレーハウスCoCo壱番屋や大戸屋、吉野家、マクドナルドなどは、市場規模も大きければ、10年に1度の流行り廃りもありません。それならば、そちらに軸足を変えた方がいいと考えたのです。

――確かにそういった業態の中には、売上を落とさずに安定経営できている企業が多い印象です。2020年に「鳥と卵の専門店 鳥玉」の沖縄にある4店舗以外の、県外については串カツ田中ホールディングスにブランド譲渡し、その展開について支援することを発表しました。事業譲渡を行った背景も、そこにあるのでしょうか。
 
左から串カツ田中HD取締役新規事業担当大須賀伸博氏、みたのクリエイト代表取締役田野治氏、串カツ田中HD代表取締役貫啓二氏
「鳥玉」のメニュー
 そうですね。まずは「鳥と卵の専門店 鳥玉」の成り立ちからご説明しましょう。まず一般的に、居酒屋という業態は利率が良く、一方でお酒を出さない業態の経営は難易度が高いので、居酒屋から別業界へのハードルは非常に高いと思います。しかし、先ほどお話しした通り、間違いなく居酒屋業態を変えないといけない時はやって来ます。そこで、お酒がない店舗として、「鳥と卵の専門店 鳥玉」をつくりました。

 その後、本当に流行の変わり目が訪れ、居酒屋の売上が落ちました。そのため居酒屋は事業譲渡することに決めたのですが、そのタイミングで「鳥玉」の存在があったからこそ、180度思い切った会社の舵切りができたのではないかと思います。

 ご質問の通り、「鳥玉」も沖縄県外の展開に関しては、2020年2月に串カツ田中ホールディングスさんにブランド譲渡を行いました。これは、ブランドを全国的に拡大するためです。しかし、我われは売って終わりとは考えていません。実際に串カツ田中ホールディングスさんとは商品開発契約を結んで商品企画などのクリエイティブ支援をすることで、今後も自社の売上につなげられるようにしています。

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