日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #18
クマしか映らないテレビCMで、あの大企業は、いったい何がやりたいのだろう?という疑問に答えます
クルマのCM?ビールのCM? 実は洗剤の広告?
海外事例でこうしたB to B企業のテレビCMは、私が見渡してみた限り見当たらなかったのですが、日清紡の『クマーシャル』を見ていて連想したテレビCMがあります。
それは、2018年に米国スーパー・ボウル中継で放映され話題を博し、カンヌライオンズ2018フィルム部門グランプリも受賞したP&Gの洗剤「Tide」による「It’s a Tide ad」です。このシリーズも何パターンかあるのですが、いちばんメインのものは、典型的なクルマのCMらしいシチュエーションやビールのCMらしい場面を描いていきます。
でも何かが違っている。それは出演者の着ている洋服が“異様に”キレイなこと。他にも髭剃りのCMやスマートスピーカーのCMのパロディを繰り広げるのですが、どれも洋服が“異様に”キレイになっているのです。
そして、「洋服が素晴らしくキレイだから、どれもTideの広告だ(It’s a Tide ad)」とメッセージしました。30秒のテレビCMを1本流すのに4億円かかると言われ、あらゆる業種の会社が最新のテレビCMをお披露目して、その人気を競うスーパー・ボウルで、どのテレビCMを見てもついついTideを思い出すというような状況をとぼけた味わいでつくり出したわけです。
私自身は、自動車修理工と思われる年配のオジサンの顔が油で汚れて真っ黒なのに、シャツだけ輝くようにキレイで、本人もそのキレイさにとまどっているように見える(うなづいてはいますが)シーンが、特に好きです。
広告コミュニケーションは、直接的に「物を売るため」だけに行われるとは限りません。ブランドや企業の価値を高められればそれで良いわけで、いろいろな形があってこそ、世界も広がり、結果として良い成果にも繋がると思っています。
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