よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #06

ファンベース戦略は「ファンクラブ運営」ではない!強いブランドをつくるための2つのポイント

ファンベース戦略を、いかに実務に落とし込むか

 本連載ではこれまで5回にわたって、アドボケイツ(=口コミしてくれる熱狂的なファン)の力を、強いブランドの構築のためにどう活用していくかについて考察してきました。

 簡単に振り返ると、第1回では、ブランドのファンが行う「推奨行動」について説明しました。続く第2回では、ファンが行う「推奨」や「口コミ」といったコミュニケーションがブランドイメージの形成に影響を与える可能性について考察。第3回は、ファンの「推奨」の力を引き出す仕組みとして4つのトリガーを提示しました。第4回では、“普通の”顧客がどのようなプロセスでファンに育っていくのかを当社ヤッホーブルーイングの例を交えて考察し、第5回では、ブランド・マネジメントの羅針盤としてのファンの声の活かし方や、ファンの心の中から新たなブランドの価値を発見した事例を紹介しました。



 今回は、前回までに提示した各テーマを俯瞰して、企業や我々マーケターが、一連のマーケティング活動の中で、ファンベース(※注)のブランディング施策をどのように統合しくべきか、あるいは、何から始めるべきか、について考えていきたいと思います。

 なお、この連載は「ブランドは顧客の心の中にあるもの」という考え方から、主に顧客視点で論じてきましたが、今回は企業視点でも考えていきたいと思います。
 

※注
ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方。
『ファンベース』(佐藤尚之著)より

 

ファンの力を活用できるようになるまでの6つのステージ

 実務上のひとつの問題は、ファンベース・マーケティング/ブランディング施策を始めるときに、「何から始めるべきか」ということです。

 決めるにはまず、自ブランドが、どの“ステージ”にいるのかを把握する必要があるでしょう。私は、ブランドがファンベースに乗って、熱狂的なファンの力を活用できるようになるまでには、次のようなステージを経ると考えています。
 

ステージ①市場導入

 ブランドが上市されてから間もなく、十分な数の継続購買者が蓄積されていない状態。
 

ステージ②継続購買

 ブランド好意(=熱狂や愛着ではない)を伴う、ある程度の継続購買者がいる状態。
 

ステージ③ファン発生

 ブランド好意を超えて、ブランドへの特別な感情を持つ顧客、いわゆるファンが出現し始めているが、企業は彼らを認 識していない状態。
 

ステージ④ファン・エンゲージメント発生

 ブランドのファンと企業との継続的なエンゲージメントが行われている状態。
 

ステージ⑤ファンとのブランド再定義

 ファンの声を聞き、ブランドの価値・ベネフィットを必要に応じて再定義する。
 

ステージ⑥ファンベース・ブランディングの最大化

 さまざまな施策実行によってファンが熱狂し、推奨やブランドイメージ形成など、ファンの力を引き出している状態。

 よなよなエールの場合は、当初からネット通販におけるメルマガのやり取りによって④の状態になっていましたが、多くの場合、③の「ファンは発生しているが、企業は認識していない状態」にあるのではないかと思います。

 その場合は、SNSなら『グランズウェル~ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』(シャーリーン・リー著)に登場した「傾聴~会話戦略」をまずやってみるということになるでしょうし、リアルな取り組みなら、小規模な「ミートアップ(ファンとの集い)」の開催というやり方もあるでしょう。
 

ファンベース視点でのブランド6つのステージ



 実務の現場では、「企業ブランドには昔からファンがいるが、新しい製品ブランドの場合はどうなるか?」というケースや、「ある製品ブランドにはファンがいるが、別の製品ブランドでファンを育てたい」といった課題もあると思います。

 その場合は、すでにファンがいるブランドと、ファンを育てたいブランドの「距離感」が重要になります。これは従来からある「ブランド拡張」の理論が参考になるはずです。ヤッホーブルーイングの場合は、クラフトビールという単一カテゴリの製品しかつくっていませんので、新ブランド投入時も既存ブランドのファンの力を活用できますが、まったく異なる用途やターゲットのブランドの場合は、同じ企業でもブランドごとにファンを育成するべきケースもあるでしょう。
 

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