よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #06

ファンベース戦略は「ファンクラブ運営」ではない!強いブランドをつくるための2つのポイント

ただの「ファンクラブ運営」に陥らないために

 また、施策の実行にあたって陥りやすいのが、ファンのため“だけ”の活動になってしまう、ということです。

 我々企業が行うべき一連のマーケティング活動(ブランド開発、認知からトライアル、ブランド好意の獲得、リピート購買の促進など)から切り離され、いわば「ファンクラブの運営」的な活動のみに閉じてしまうことがあるのです。

 そうならないためには、マーケティング・ファネルを横に見つつ、ファンへの入り口戦略(ファン育成)とファンからの出口戦略(推奨とブランドイメージの発信=ファンが他の人に伝えられるようにすること)を組み込むことが肝心です。

 ヤッホーブルーイングの場合は、当初は「宴」という1種類のイベントしかやっていなかったのですが、徐々に「初心者ファン向け」「コアなファン向け」といった具合に施策を分けて、ステップアップできるよう変化しました。

 効果の測定という点でも、入り口戦略としては、施策ごとに「目標初心者率」を設定し、「飲用経験年数」「イベント参加回数」などによって把握することにしています。

 出口戦略としては、施策に対する満足度だけでなく、NPS(Net Promoter Score=正味推奨者比率)などの指標を併用して効果測定を行っています。

 しかしながら、これだけでは一連のマーケティング活動にファンベース戦略を統合できたとは言えません。連載の第4回において、ファンの育成においては、「非日常体験」「人生が変わる体験」「共感」「驚くべき顧客対応の体験」「継続的なエンゲージメント」のいずれかの組み合わせが重要であると考察しました。

 しかし、そもそも、そういった体験が存在することを、まずは顧客に認知してもらうために、企業からの情報を顧客が受け取れるようにする必要があります。特に、食品や消費財のように、消費者が購入する時点をメーカーが把握できない場合、継続的な顧客エンゲージメントチャネルを確立することは容易ではありません。製品のトライアルによってブランドに好意を持った顧客を、いかにして熱狂的なファンへと続く旅路に導くのか、いまもって大きな課題として残されています。


 

ファンベース戦略は、全社戦略である

 今回は、ファンベース・マーケティング/ブランディングの実行にあたって何をすべきか、2つの視点を提示しました。

 第1に重要なのは、現在ブランドがファンとの関わりという観点でどのステージにあるのかを把握し、何から始めるかを決めること。

 第2に重要なのは、マーケティング・ファネルを横に見て、熱狂的ファンになるまでの、いわばファン育成と、熱狂的ファンが他の顧客や消費者全体に及ぼす効果の最大化(推奨とイメージ発信)の2つを戦略に組み込むことです。
 
版権: asawinklabma / 123RF 写真素材
 いずれにせよ、ファンベース・マーケティング/ブランディングはマーケティング組織全体、さらには企業全体の巻き込みが重要です。そこは論より証拠。マネジメント層も含めたマーケティング部門全体でのファンとの接触が、人と組織の考え方を変えていくはずです。
 
続きの記事:
起源に立ち返るべきか、忘却すべきか。よなよなエール流 ブランド論【ヤッホーブルーイング 稲垣聡】
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