日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #20

広告でも「ドヤ顔」は嫌われる。イマドキ表現で秀逸なインディードのテレビCM

前回の記事:
渋谷駅前に出現、話題のNetflix広告「下を見ろ、俺がいる。」の“分からない”という強さ
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えて行こうと思います。今回は、その第20回です。
 

大量に流れるCMでNO.1訴求。でも“ドヤ顔”ではない?


 豪華な施設でキャンプをするグランピングで、恋人関係と思われる男女2人(斉藤工さんと泉里香さん)が登場。

 「仕事探しはインディード♪、バイト探しもインディード♪」と歌いこみで一番伝えたいメッセージを話した後に、男性がボソッと「インディードのアプリ、1位だって」と女性に話しかけます。

 すると女性は「すごい順位とか気にするよね」と、“それがどうしたの?”といった風情で切り返し、微妙な空気を残して2人のやり取りは終わることになります。
 
Indeed(インディード)CM:「グランピング」篇 15秒

 このテレビCMシリーズには他にもいくつかのバージョンがあって、湖畔で2人でくつろいでいる時に「インディードのアプリ、1位になったんだって」と男性が話しかけると、「でも、それ、どうでもいいかも・・」と女性が切り返したり、家の中で女性が一生懸命にフラフープをしていて、男性が「ねぇ、インディード、日本でも世界でも1位になったね」と話しかけると、女性は集中できずにフラフープが落ちてしまい「ちょっと、話しかけないでよ」と軽くキレたりします。
 
Indeed(インディード)CM:「テントサウナ」篇 15秒
 
【indeed】フラフープ編 [斎藤工][泉里香] 15秒 CM

 この女性(泉里香さん)の切り返しが、とてもイマドキで効いていると思うのです。NO.1であることはクライアントが“伝えたいこと”です。

 昔のテレビCMなら、声を張って何度も何度も、大きくて派手な色の文字まで出して強く主張したでしょう。でも、それは今ではウザいし、押しつけがましい。この「NO.1である」という情報は求職サービス選択時の後押しにはなるだろうけれど、それを“ドヤ顔”で言われると、引いてしまうし、醒めてしまいます。

 そんな生活者の心理を、女性が様々な形で「これみよがしなNO.1訴求」を否定することで体現しているのが、このテレビCMです。結果として、返って1位であることは頭に残るし、一定の好感度の獲得にも繋がっているでしょう。

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