日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #22
メッセージと伝え方のミスマッチは、炎上につながる。あの品川の件を考察してみた
バドワイザーの秀逸広告。「What to say」を究極のプル型「How to say」で
「How to say」に関して近年ではもうひとつ、プッシュ型の広告コミュニケーションとプル型の広告コミュニケーションがあると言われています。プッシュ型コミュニケーションとは声高に何かを主張するやり方で、多くの人に気づいてもらえそうではありますが、一方でウザがられる危険性も大きくなります。プル型コミュニケーションは、上手くやらないと「What to say」まで到達しない生活者も出て来ますが、しかし、受け手自らが関与するように企画するので、気持ちには残りやすいと考えられています。先ほどご紹介した炎上事例などは、プッシュ型の最たるものでしょう。
海外事例で、究極のプル型コミュニケーションとも言えるものを紹介しましょう。2018年カンヌライオンズでプリント&パプリッシング部門グランプリを受賞したバドワイザーの“TagWords”です。以前にも、一度紹介しています(参考:広告の常識からは、前代未聞。ラベルを剥がす、サントリー 伊右衛門テレビCMの狙い)。
この屋外広告に記されているのは、例えば「1967, MONTEREY AUDIENCE, BUDWEISER」とか「1987, CALIFORNIA HIP-HOP, BUDWEISER」というキーワードと、SERACH IT(これで検索してね!)という文言とバドワイザーのロゴだけです。
この3つか4つの単語を入れて検索をかけると、ポール・マッカトニーやミック・ジャガーといった音楽界のスーパースターが、バドワイザーを手にしている写真が現れるのです。
解説ビデオでは「権利関係でミュージシャンたちがバドワイザーを手にしている写真を使えないのでこの企画をした」と言っていて、そういう事情もあるのでしょうけれど、それよりも「音楽のそばにはいつもバドワイザー」という「What to say」を、押しつけがましくない「How to say」で伝えた好事例だと思います。
Budweiser“TagWords”の事例ビデオは、こちらでご覧いただけます。
たとえ、メッセージ「What to say」が伝えるに値することだったとしても、伝える場所(メディア)や伝え方「How to say」を間違えると、好感触を得られないばかりか、誰かを傷つけたり、炎上状態になったりしかねません。
送り手には大いなる注意が必要とされるわけですが、自分自身も分析や考察を進め、少しでもお役に立つ知見を提供できるようにしていきたいと考えています。
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