成果を出すコンテンツマーケティング虎の巻 #05

全てのマーケターに必要な「PR脳」とは何か? 【KDDI 西原由哲】

前回の記事:
「想像を超える体験」で仕掛ける、KDDIの新たなブランディングとは?
    

常に変化する、最適なコミュニケーション

   
 今回は、前回 ご紹介したKDDIの体験を軸としたコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」で、新たにトライしはじめたコミュニケーション設計についてお話したいと思います。

 少し古い話から入ってしまい恐縮ですが、私が最初にコミュニケーション関連の業務を担当したのが戦略PRの取り組みでした。12年前の当社のコミュニケーション設計は、広報のプレスリリースや商品発表会、そしてサービス開始や発売に合わせてCMなどの広告宣伝を始めるといったものがフォーマット化されていたのですが、戦略的PRの取り組みでは、その中にお客さまの「口コミ」という要素や、より広告効果を高めるための「事前の空気づくり(PRファクトづくり)」という考えを取り入れていきました。

 例えば、最初の活動事例となった「ソーラーフォン(2009年発売)」という携帯電話は、名前の通り、太陽光で充電できる初の携帯電話でしたが、「太陽光で充電できますよ!」とストレートに訴求するのではなく、“今の時代、有事の際に連絡や情報収集に携帯電話は欠かせないのではないか”、“その際に充電切れが心配ではないか”といった仮説を立て、事前に「災害などの非常時に持っていきたいもの」という調査を行うことにしました。

 調査段階ではソーラー充電などの商品訴求には全く触れていません。あくまでお客さまのインサイトを始点として、訴求したいファクトから逆算的にPRファクトをつくり、それを軸にコミュニケーションを設計する考えです。(そのため、仮説通りの結果が出るかヒヤヒヤしますが…)。

 調査結果は、上位から「財布」「携帯電話」「めがね・コンタクトレンズ」でした。これらファクトを“災害時の三種の神器”としてプレスリリースし、オウンドメディアで“有事の際でも携帯電話が充電しやすい“という文脈を補って訴求しました。この活動の結果、多くの朝の情報番組での特集をはじめ、新聞、雑誌、Webなど多くのメディアに取り上げていただき、仮説を基にした調査を使って事前の空気づくりができた事例となりました。

 その後も、「おもいでケータイ再起動」という充電できなくなったケータイから思い出の写真を復活する企画では、他の企画で顕在化した「今も使わなくなったケータイを持っているが、充電できないので思い出が見れなくなってあきらめている」というお客さまのインサイトをもとに仮説を立て、“9割の人が昔のケータイを今も持っている”、“一番の理由は中に思い出深い写真やメール残っているから”、“でも、今は電源が入らない”という調査結果を企画の背景ファクトに使いました。なお、2017年に行ったこの調査結果は先日(2021年10月)も情報番組で使われたりもしました。
          

       
 これらのベースとなる考え方は、お客さまのインサイトを顕在化し、より興味関心や利用意向を持っていただけるストーリーラインを設計することで、大切なのは広告脳よりもPR脳で届けたいお客さまに最適な手法をニュートラルに設計することだと思います。そして、この「PR脳でのニュートラルなコミュニケーション」は、現在手掛けているGINZA 456 Created by KDDIの体験設計でも続けています。

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