日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #番外編
世界最高峰の広告コミュニケーションの祭典「カンヌライオンズ」 マーケターにとって、どんな意味があるの?
2人のエキスパートは、マーケターにとっての意義を強調
ここからは萩原さんの幾つかの質問と、それに対しての2人それぞれの話のポイントをまとめて紹介していきましょう。
■ カンヌライオンズの魅力は?
木村 世界一の技に一喜一憂するクリエイティビティの世界大会。他にアートスクールのような感性を磨く場、MBAのような最新のケーススタディを学ぶ場、様々な人と出会う場という意味合いもある。
佐藤 多様なモノ・コト・ヒトとの出会いの場所。そして、巨大な語り場。
■ 21年度のオンライン開催はどうだったか?
佐藤 カンヌライオンズのひとつの意義は見るべき事例のキュレーション機能なので、なにはともあれ審査結果が出て良かった。またバーチャル・エクスペリエンスなどの工夫も悪くなかった。健太郎さんとバーチャル空間で会って少し話したりも・・・。
木村 コロナ禍以降のオンラインイベントの中では、よくできてた。達郎さんと会ったように・・・。
■ すごい「作品」しか評価されないの?あるいはソーシャル・グッドじゃなきゃダメですか?
佐藤 商品やサービスのビジネスに寄与してさえいれば、プチ・アイディアも、ソーシャル・グッドじゃないものも、評価されますよ(事例“セルフィ―・スティック---べディグリー---”と“チートス・ミュージアム”」
木村 ちょっとスライドを使って、CSRからCSV、パーパスからアクティビズムへの、この10数年間の流れを簡潔に説明しますね。
■ 企業(広告主)にとってのカンヌライオンズの意義は?
木村 世界のビジネスの潮流を身体で感じ取れ、その中で自社の位置づけや活動の是非を体感できること。できれば、単なるお客さんではなく、自社の仕事や活動を出品したりセミナーで話したりなんらか“参加する”ことをお勧めします
佐藤 送り手としての“他者研究”。世界の名だたるブランドのCMOの声を生で聞けるのも刺激的。受賞を自社PRとして使う手も(事例 “マザー・ブック---愛知で産婦人科医院を経営する葵鐘会ベルネット---)。
■ 受賞するには?
木村 2012年には日本が50以上のメダルを獲得したが、当時に比べると存在感が薄まった。トレンドに合わせに行った作品は翌年には古くなる。10億人レベルに共感されポジティブな影響を与え得る普遍性を持った太い仕事が望まれる。
佐藤 “有名ブランドじゃないものや大キャンペーンじゃないもの”は、日本の国内賞よりむしろ獲りやすいのでは? 世界に普遍的な社会的課題や価値を扱うのは有効かも。また例えば、ソーシャル・エクスペリメントなどの評価されている方法論を採用する手も・・・。(事例 “The Family Way ---リクルートライフスタイル---“)。
最後に、「来年はどうなりそうか?」という萩原さんの質問に対する2人の答えをご紹介しましょう。
まずは佐藤達郎から。
「来年、また知らない事例を見て、驚きたい。傾向を予想する必要はなく、新鮮に驚いてヒントを探すだけで、カンヌライオンズとの付き合い方としては十分だと思っています」(佐藤)。
そして木村健太郎さん。
「911テロ事件が起きた翌年の2002年や、リーマンショック後の2009年は、実は停滞ではなく、その後クリエイティビティ産業に大きなイノベーションを起こすような受賞作が出ている。来年もそういうものを期待したい」(木村)。
登壇側としてはあっと言う間の時間でしたが、聞いていただい皆さんは、いかがだったでしょうか。特に企業側マーケターの方に少しでも興味を持っていただけたなら、と願っています。
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