日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #23

ACC賞4冠の「THE FIRST TAKE」。2021年は、“あるがまま”が受けいれられる年だった

前回の記事:
メッセージと伝え方のミスマッチは、炎上につながる。あの品川の件を考察してみた
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第23回。年末なので2021年を振り返りながら記して行きます。
 

音楽業界を席巻、有名ミュージシャンの緊張が伝わる一発撮り


 皆さん、THE FIRST TAKEをご存じでしょうか? 普通のミュージックビデオかと思うと、目に入って来るのは、白いスタジオに置かれた1本のマイクとミュージシャン。歌い手の息づかいまでが聴こえて来そうな“生々しい”音に、心惹かれた人も多いことでしょう。
 
YouTubeチャネル「THE FIRST TAKE

 筆者が「THE FIRST TAKE」を最初に認識したのは、バンド「Dish//」の猫という楽曲。あいみょんの作詞作曲によるこの曲を聴き、「猫~THE FIRST TAKE ver.~」という表記を目にした時です。

 調べてみると、「猫」が最初にリリースされたのは2017年ですが、2020年4月にこのTHE FIRST TAKE ver.が配信リリースされ人気となり、2021年2月には再生回数が1億回を越える大ヒットとなりました。

 他にも、LiSA(炎)やYOASOBI(夜に駆ける)や優里(ドライフラワー)など、超人気ミュージシャンの代表的な楽曲のTHE FIRST TAKEバージョンが配信リリースされ、それぞれ再生回数が何千万回にも達し、音楽界の一大ムーブメントにとして注目されました。

 THE FIRST TAKEのWebサイトによれば、その特徴は以下になります。「白いスタジオに置かれた、一本のマイク。ここでのルールは、ただ一つ。一発録りのパフォーマンスをすること。それ以外は、何をしてもいい。一度きりのテイクで、何を見せてくれるだろうか」

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