トップマーケターが語る2022年の展望 #02

田岡敬、藤原尚也、石戸亮、大倉佳晃 ―トップマーケターが語る2022年の展望②

前回の記事:
足立光、音部大輔、富永朋信、世耕石弘 ―トップマーケターが語る2022年の展望①
 新型コロナウイルスの感染拡大は以前に比べ落ち着きを見せてはいるものの、まだ完全に収束が見える状況にはありません。パンデミックをきっかけに消費者の購買行動やコミュニケーションに変化が見られるなか、2022年における企業のマーケティング活動はどのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2022年の展望」を語ります。
 

好意や信頼を得る企業からの多様なコミュニケーションの実現


田岡敬
office K
代表取締役

 Web広告がCookie less時代を迎え効率の悪化が予測され、今後マス広告だけでなく広告全般の効率悪化が見込まれるため、企業が消費者と直接繋がりコミュニケーションできることの重要性が増します。繋がる方法の代表的なもののひとつがID登録であり、もうひとつがSNS、アプリに代表されるオウンドメディアやアーンドメディアのフォロワー獲得でしょう。広告による繋がりとの一番の違いは、広告はお金の力によって半ば強制的に繋がりをつくれますが、IDやSNSフォロワーはお金の力だけでは獲得できないということです。好意や信頼が前提にないと、IDやフォロワーは獲得できませんし、好意や信頼がなくキャンペーンなどで獲得したものは、すぐにコミュニケーションをブロックされてしまいます。

 企業のSDGsへの取り組みやエシカル消費が取り上げられることが増えていますが、それらはまさに消費者から企業への信頼と好意に関わります。「IDによるone to one」「オウンドメディアによる1対多」という両方のコミュニケーションを行えることは強みとなります。製造小売業の場合、小売業としてIDを取得し、メーカーとして商品情報を発信できるので魅力的なSNS運営をしやすく、その両方を行うことができます。

 私もニトリホールディングス所属時にこの両輪を回していましたが、ユニクロ、無印良品なども上手く両方を使っており、元々強かった製造小売業というモデルがさらに強くなっていくと思われます。
 

消費者の意識や行動を捉えたマーケティング


藤原尚也
アクティブ合同会社
CEO

 2022年度は、企業の「ビジネストランスフォーメーション」がより強く求められる年になると思います。コロナ禍を経て、ユーザーの生活行動や意識は変わりました。当然、変わらないこともあります。しかし、元の消費行動に戻るのではなく、新しい進化した未来のスタートになります。そのなかでも特に注目したいのが、「サステナブル(持続可能な社会)」への企業姿勢だと思います。

 これはメッセージではなく、具体的に商品やサービスにしっかり紐づけて展開していくことで、環境問題や社会への貢献を企業と消費者がともに実現していくことが必要になってきます。消費者の意識や行動を捉えたマーケティングをしていくことが「LTV向上」に直結すると思います。
 

SaaSとノーコードを操れない人材と組織は生き残れない


石戸 亮
パイオニア
Chief Customer Officer & Chief Marketing Officer at Mobility Service Company

 この20年、インターネットの普及により消費者の情報収集や選択肢が累乗に増加しており、年々多様性のある社会へと変化し、顧客を理解するのが困難な時代になってきました。一方で顧客理解に便利なツールやデータもたくさん世の中に出てきています。またコロナ過における働き方も変わりました。

 ビジネスパーソンは本来やるべき業務、営業なら売上をつくる、マーケターなら顧客を理解する、人事なら採用や育成などの主務があるわけですが、それ以外の作業に追われながらも主務で成果を出すために多層的な情報処理や把握、データに基づいた判断が必要です。そういった中で、業務が最大公約数的に型化されたSaaSを用いて、ノーコードでIT部門や外注に頼らず業務プロセスを最速で構築し、やるべきことにまっとうすることが必要です。むしろそれができなければ5年後かなり差がついていると思います。
 

キーワードは「SDGs、パーパス、コミュニティ、ファンマーケティング」


大倉 佳晃
OKURA BOOTCAMP
代表取締役社長

 「SDGs、パーパス、コミュニティ、ファンマーケティング」、これらのバズワードを繋ぐとどうなるでしょう? 強いリーダーによって規定されたSDGs文脈に沿ったパーパスがあり、そこに共感したファンが形成するコミュニティベースのマーケティングを強みとするカルト的なブランドが、米国に続き日本でも出てくるかもしれません。その萌芽は随所に見られます。そして、これはスモールブランドだけの話ではなく、マスブランドも状況に応じてキャッチアップしないと、いつか手遅れになるかもしれません。

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