トップマーケターが語る2022年の展望 #03

本田哲也、鈴木健、富山浩樹、菅恭一 ―トップマーケターが語る2022年の展望③

前回の記事:
田岡敬、藤原尚也、石戸亮、大倉佳晃 ―トップマーケターが語る2022年の展望②
  新型コロナウイルスの感染拡大は以前に比べ落ち着きを見せてはいるものの、まだ完全に収束が見える状況にはありません。パンデミックをきっかけに消費者の購買行動やコミュニケーションに変化が見られるなか、2022年における企業のマーケティング活動はどのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2022年の展望」を語ります。
 

「ナラティブカンパニー」の時代に

本田 哲也
PRストラテジスト
本田事務所代表

 今年はますます、マーケティングにおいても、「ナラティブ」かどうか?が問われていくでしょう。

 「物語的な共創構造」であるナラティブはストーリーと混同されますが、ストーリーはブランドが主役の物語なのに対して、ナラティブの主役はむしろ生活者。そして物語の舞台は、市場における戦いではなく社会全体です。ストーリーには「起承転結」があっていつか終わるものですが、ナラティブは現在進行形で終わりがありません。

 さらにいえば、ナラティブはマーケティングや広告PRのみならず、採用を含む人事開発や企業経営の領域でも注目され始めました。これからのマーケティング活動は、顧客のみを狭義に意識するのではなく、社会におけるステークホルダー観点がその成否を分けます。ナラティブカンパニーの時代が進むでしょう。
 

オーセンティシティという価値の重要性

鈴木 健
ニューバランスジャパン
マーケティング部 ディレクター

 コロナによる影響がパンデミックではなくエンデミック(ある感染症が、一定の地域に一定の罹患率で、または一定の季節に繰り返し発生すること)として、局所的かつ流動的な変化として続くなか、デジタルによる社会と経済の変化がさらに加速していくとすると、マーケティングにおいてもその変化に対する適応や、デジタル化を核とした消費者とのつながりの深化がますます鍵になると予想します。

 ただし、デジタル化では避けられないプライバシー保護の観点から、デジタルの利便性だけに頼るだけではなく、ブランドが本来持っている消費者とのつながりにおけるオーセンティシティという価値の重要度が高まるといえます。それは、伝統的な消費のスペースを超えたデジタルの新しい生活時間と空間=メタバースが拡大する中で、いかにその価値をそのまま拡張・強化できるかどうかが課題になるからです。
 

変革するビジョンを持ち、行動する企業や地域にリソースが集まる

富山 浩樹
サツドラホールディングス
代表取締役社長 兼 CEO

 「サステナブル」「デジタル」「地域」がより着目されるようになると思います。 アフターコロナでは人手不足がまた顕在化され賃上げも進みます。地方はもちろん中核都市でさえも人口減少や高齢化の問題に直面しています。企業も地域もいよいよ持続可能なやり方に変革することが「待ったなし」だと突きつけられるでしょう。

 企業においてはより生産性に着目したデジタル活用が不可欠になるでしょう。それぞれの業界や分野でそのモデルづくりが出来るか。またGAFAMなどのグローバルジャイアントがますます強くなりサービスの優勝劣敗がつくスピードがますます速くなってきました。業界の垣根を越えたコラボレーションやコングロマリッドな経営戦略が必要になると考えます。地域においては生活インフラを確保していくのか、どう新しい産業を生み出していくのかが問われています。

 デジタル庁が立ち上がり「デジタル田園都市構想」も打ち出されました。デジタルを活用し官民一体となって持続可能な地域づくりをしていくことが必要です。 そしてこれらにはSDGs、ESGの観点が求められます。変革するビジョンを持ち、行動する企業や地域によりリソースが集まるようになってくるでしょう。サツドラも頑張ります。
 

自社独自の戦い方の選択

菅 恭一
ベストインクラスプロデューサーズ
代表取締役社長

 いま、興味深く観察している事例が2つあります。 ひとつ目はウォルマート。2018年にはD2Cブランドを40社買収すると宣言していた同社は、翌年にはこれらを手放し始め、現在はバーティカルとは真逆の方向に舵をきってデータや広告サービスを外販するプラットフォーマーに変貌しつつあります。 2つ目は家電のノジマ。斜陽が叫ばれている百貨店にあえて出店し成功を続けています。同社はメーカーや商品カテゴリを跨いでお客さまがベストな買い物ができるようにサポートする外商的な接客を特徴にしています。このようなサービスは家電リテラシーの低い消費者に受容性が高く、百貨店というチャネルは親和性が高いわけです。

 DX、D2C、OMO、新しい掛け声は変革のきっかけとして歓迎されるものではありますが、どこか表面的で他社と似たようなものになりがちです。ウォルマートはD2Cを捨て、ノジマは百貨店に逆張りしました。2022年は、変革の兆しに対して、表面的なトレンドに流されすぎず、自社独自の戦い方を選択する骨太なあり方を追求したいと思います。

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