トップマーケターが語る2022年の展望 #05

藤原義昭、水島剛、田部正樹 ―トップマーケターが語る2022年の展望⑤

前回の記事:
奥谷孝司、片山義丈、中村淳一、山口有希子 ―トップマーケターが語る2022年の展望④
 新型コロナウイルスの感染拡大は、まだ完全に収束が見える状況にはありません。パンデミックをきっかけに消費者の購買行動やコミュニケーションに変化が見られるなか、2022年における企業のマーケティング活動はどのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2022年の展望」を語ります。
 

一人ひとりの「顔の見える顧客」と長期的な関係を築く


藤原義昭
ユナイテッドアローズ
執行役員DX推進センター担当本部長CDO

 2020年の大転換点において、企業は生活者の新しい生活への対応が求められました。そのなかでもほぼ全ての企業が実行したのは、会社のデジタル化であったことは間違いありません。パンデミック元年を企業の本格的なデジタル化元年であったとするならば、もう今年は3年目へ突入することになります。しかしここで、もう一段歩みを進める勇気を持ち、行動を緩めず成果につなげていきたいです。

 マーケティングに求められるのは、主に3つ考えられます。ひとつ目はさらなる顧客理解です。withコロナにおいて顧客の価値観や行動の変化を今まで以上にとらえる必要があります。2つ目はデジタル接点での体験です。リアルを持つ企業は特に2020、2021年共に顧客との接点が減っているため、顧客に忘れられないようデジタル上での振る舞いはデジタルネイティブ企業以上に大切です。面を出すだけでなく印象に残る工夫が今まで以上に求められます。そして、3つ目はLTV重視への転換です。国内においては既に顧客数が減り始め、不特定多数の顧客を今後も得ていくことの困難さが明確であり、LTV重視が必要であることは誰もが想像できますが、なかなか舵をきることができていません。一人ひとりの顔の見える顧客との長期的な関係を築くことが非常に重要です。
 

攻めよりも守りのコミュニケーション


水島 剛
Indeed Japan
Marketing Director

 企業から発信される情報に対する生活者の反応が、目に見えて大きくなっているように思えます。特に世の中がストレスを抱えている状況では、何かに対して支持する声よりも、非難する声の方が大きくなりやすい気がしています。そんな中、攻めよりも守りのコミュニケーションの重要性が増し、特に生活者に接触の選択権を与えられないマスメディアを活用したコミュニケーションに関しては、監視の目がより鋭くなっていくでしょう。マーケターは、メッセージを届ける生活者の総体を理解し、その総体に対して適切なコミュニケーションを行うことが求められます。LGBTQ+やSDGsなど、社会的なテーマに対しての適切な感覚を身に付け、サービスのマーケティングを行う際にも、企業広報の視点を持ちながら行うことが重要です。

 一方で、世の中のルールが変わる潮目(チャンス)でもあるので、攻めの姿勢も求められます。世の中の変化の激しい空気を体感し、積極的なマーケティングを恐れずに実行していく、バランス感覚と強い意思がマーケターに求められるのではないでしょうか。
 

顧客理解からの顧客価値創造


田部正樹
ラクスル
取締役CMO/ノバセル事業本部長

 2021年は、マーケティングの定義が矮小化して議論されることが多い1年だったように思います。マーケティングとは「売れ続ける仕組み創り」であり成長戦略そのもののはずです。テレビCMやWebマーケティングはプロモーションの中のひとつですし、言葉としてのDXやUXも手段しかありません。

 成長戦略の本質は、いつの時代も顧客理解からの顧客価値創造だと思います。耳障りのいいバズワードにのせられて、実は顧客から離れていっていないかを自社に問い直すことをお勧めします。Webマーケティングひとつを取っても、数値だけを見てCPAを改善するのではなく顧客がなぜそのバナーを押すのか、その動画を視聴するのかというインサイトに想いを巡らせて仮説の数を増やし、プロダクト・サービスや価格を連動させられると価値が高まります。

 マーケティングという言葉自体が陳腐化されていく中で、本質を理解し手間がかかるし非効率だけれども顧客と向き合い続ける企業がマーケティングの本質である「売れ続ける仕組み」を構築できる。その道が分かれる1年になると思っています。

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