いま注目のビジネスパーソン #02前編

「着られる服がない」コンプレックスをビジネスチャンスに変えた、小柄女性向けアパレルブランド「COHINA」の成長ストーリー

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 いま注目の若手ビジネスパーソンにユナイテッドアローズの藤原義昭氏がインタビューする本企画。第二弾、アパレルブランド「COHINA」は2018年の創業以来、「自分に合うサイズの洋服がない」という身長150cm前後の小柄な女性の悩みを払拭するファッションアイテムを提供し、2021年には月商1億円を突破しました。

 藤原氏が同ブランドの代表兼ディレクターである田中絢子氏に創業までの想いや商品企画、小柄な女性にとって必要不可欠なブランドへと成長させたストーリーを聞きました。
 

世の中に対しての「違和感」から生まれたビジネスの源泉

藤原 田中さんはなぜ、「COHINA」を始めたのでしょう。

田中 私自身も身長が148cmと小柄で、平均身長の人であれば当たり前に手に入るはずの洋服が売られていなかったことにすごく違和感があったんです。たとえば、商業施設に買い物に行っても、ワンフロアすべて巡ってようやく着られそうな服に3~5着出会えるぐらいでした。

 「世の中にはこんなに洋服があふれているのに、小柄な女性が着られる服がない」ということに、絶望感やいきどおりがありました。私の周りにいる小柄な女性に聞いても悩みは同じで、「小柄向けの洋服があったら絶対買う」という声が多く、これはビジネスチャンスかもしれないと考えて「COHINA」を立ち上げたんです。まずはサンプルをつくって本当に売れるか試そうと決めました。
田中絢子
COHINA 代表兼ディレクター

藤原 アパレルでの経験がない人が急にファッションブランドを始めようとしても右も左もわからず、「そもそもサンプルって何?」という話になりませんか。

田中 はい、最初はGoogleで検索しました。そこで「どうやらOEMというのがあって、発注するとサンプルを仕上げて納品までしてくれるらしい」とわかり、日本のOEM企業や工場に連絡してみました。ただ、当時は大学生だったこともあり全く相手にされませんでした。

 そこから、ようやく製造してくれる国内工場を見つけたのですが、工場から届いた見積もりは1着3~5万円はかかるという値段で、当時の私には想定以上の金額だったため国内工場での製造は断念しました。というのも、小柄な女性向けのブランドは、百貨店などではすでに存在していたのですが、学生だった私には高級すぎたんです。既存ブランドとの差別化を考えて「手に届く価格帯」と「ニーズに合ったデザイン性」はマストな条件で販売価格は1万円程度にしたいと考えていました。そこで中国のアリババで10社くらい見積もりを取って、そのうちの1社に発注して初回ロットをつくったんです。

藤原 アパレルで起業する人は、例えばアパレル業界に入社して、好きで働いているうちに独立するケースが多いです。しかも、その中でも成功する人は飛び抜けて感性が高かったり、たまたま少し先のマーケットのニーズとばっちり合ったり一握りだと思います。その点、「COHINA」は小柄な女性向けファッションブランドというビジネスニーズから入っています。
藤原義昭
ユナイテッドアローズ
執行役員DX推進センター担当本部長CDO

田中 そうですね、私は大学では政治の勉強をしていましたので、アパレルとは無縁でした。「COHINA」を始めたのは2017年の大学4年生のときです。Googleから内定をもらっていましたが、自らビジネスを始めたいと思っていたので、大学卒業までの半年間で「COHINA」を立ち上げたんです。Googleに就職してから1年くらいは二足のわらじで大変ではありましたが、それでも私のような小柄な女性にとって服がないというのは死活問題だったので、どうにか解決したいと強く思っていました。
COHINA STORE公式サイト

藤原 ファーストシーズンの商品数はどのくらいあったんですか。

田中 初めは本当に商品が売れるかわからなかったので、とにかく小ロットでスタートしようと、つくったのはシャツとスカートのセットアップだけでした。Instagramでの販売を想定していたので、コーディネートの投稿ができるアイテムとして、最大限にまとまった情報が発信できるセットアップにしました。

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