日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #25

流行を見事に取り入れ、サービス情報を伝え尽くすトライの「THE FIRST TAKE」風テレビCM

 

スマートスピーカーに乗っかった、バーガーキングの面白事例


 流行を見事に取り入れた事例として、2017年のカンヌライオンズでダイレクト部門のグランプリも受賞した話題作を紹介しましょう。バーガーキングのテレビCM「Google Home Of The Whopper」です。

 2016年11月に米国で発売されたばかりのGoogleのスマートスピーカー「Google Home」。2017年4月に、このバーガーキングの15秒のテレビCMが流されました。店員役の男性がこちらに向かって、こう話しかけます。

 「15秒間のCMじゃ、残念ながらワッパーの新鮮な材料を説明することはできない」

 ワッパーとはバーガーキングで一番スタンダードなハンバーガーのことです。そして、店員は続けます。「そこで良いアイデアがある」とカメラを呼び寄せて、「OK、Google。ワッパーバーガーって何?」と話すところでこのCMは終わります。

 すると、このCMの「OK、Google」の一言に視聴者の自宅の「Google Home」が反応して、ウィキペディアの説明を読み上げるという仕掛けです。「ワッパーは添加物が一切含まれていない、100%牛肉のパティを直火で焼いたものに、トマト、オニオン、レタス、ピクルスのスライスを載せて、ケチャップ、マヨネーズとともにゴマ付のバンズに挟んだバーガーのことです」といった具合にです。ウィキペディアは誰にでも書き換えられるので、どうも事前にこうした詳しい解説が書き加えられていたようです。

 すぐに気がついたGoogleは、数時間後には、このテレビCMの「OK、Google」の声には「Google Home」が反応しない処置を施しました。それに対して、バーガーキング側は別バージョンを流して対抗します。Google側はそれらにも反応しないようにするなどして、こうしたやり取り自体も大きな話題となりました。
 
 

 バーガーキングの事例はいろいろな批判もあったようですし、必ずしも手放しで褒められない事例かもしれません。しかしながら、流行をどん欲に取り入れようとする態度は、広告コミュニケーションにとって重要であり、今回とりあげたトライのテレビCMは、良い方向でうまく取り入れた事例だと言えるでしょう。
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