日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #26

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7割以上の店舗を一時閉店に追い込まれたKFCの謝罪広告


 名前を少しだけ変えることで強いインパクトを残した事例として、カンヌライオンズ2018でPR部門のゴールドを受賞した、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)の“FCK”をご紹介しましょう。

 その時、イギリスでは配送業者とのトラブルがあり、多くのKFC店舗に鶏肉が届かない事態に。約900店中700店で一時的閉店を余儀なくされていました。急な事態だったために情報も行き渡らず、一時閉店を知らずにKFC店舗に出かけて行き落胆したユーザーも多かったようです。

 そんな中、KFCは新聞広告を掲載しました。「本当にすみません」で始まる文章は、ユーザーへの謝罪と関連各位への感謝で占められています。一見すると、単なる謝罪広告ですが、ビジュアルはチキンが無くてカラになったKFCの入れ物。サンダースおじさんの顔の下に書かれている文字をよく見ると、「あれれ、KFCじゃなく、FCKになってる!」と見た人は気づきます。
 

 FCKは英語圏の人であれば、だれでも「くそったれ!」といった汚い言葉(そのままではないけれど)だと分かります。つまり、KFCは自らの名前3文字の配置を少しだけ変えることで、さりげなく、しかし痛烈に、自分たちの悔しい気持ちを表したわけです。このことに気づいたユーザーがSNSに投稿をはじめ、番組やWebでも取り上げられ、KFCに対するポジティブなムードにつながったと言われています。

 普通は絶対に変えない、大切な名前を変えることで、インパクトを保ちながらメッセージする方法は、意外と効果的かもしれません。各関係方面との交渉や調整が、相当に大変そうではありますが…。
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