TOP PLAYER INTERVIEW #02

PRパーソンに求められる「スキル」が10年間で変化した【ブルーカレント・ジャパン 本田哲也】

前回の記事:
男性エグゼクティブは淘汰され、ベテラン女性は出世。世界のPR業界の現在【ブルーカレント・ジャパン 本田哲也】

10年で日本のPR業界は何が変わったのか

 現在のPR業界を10年前と比較すると、大きく変化しました。2009年1月に「戦略PR」という本を出版したので、10年前と言えば、ちょうどその本を執筆していた頃です。

 振り返れば、当時の日本は「PR=パブリシティ」だと考えられていました。広告やマーケティングと密接な関係がなく、例えばマーケターにとっては広告代理店に仕事を発注すると、PR担当者がリリースを書いたり、メディアを呼んで来てくれたり“おまけ”で付いてくるといったイメージです。

 しかし、リーマンショックで広告費が削減される中で、PRに注目が集まります。PRの持つ機能が、消費者のパーセプション(認識)に変化を起こさせるとすれば、新市場創造やブランドリニューアルといったマーケティングの根幹に関わるだけでなく、広告と連動する存在だという気づきが生まれたのです。

 SNSが急速に浸透したことも、大きな変化です。SNSはペイドメディアと違って、企業が制御できません。そもそも制御できないものに立ち向かう手法であるPRのノウハウを生かすチャンスが広がったのです。一方で、炎上対策など新たなリスク管理も求められるようになりました。



 まとめると、10年間でPRの本質的な役割が理解され、より上流の仕事が増えたと言えます。さらに、生活者がパワーを持ち、相対的に従来メディアの力が弱まることで情報構造が変化し、PRや広告といった垣根も消えつつあります。
 

これからのPRに求められる能力

 PRや広告といった手法の垣根が消える中で、PRパーソンに求められるスキルも変化しました。それは、企業側とPRエージェンシーで分けて考える必要があります。

 企業の広報担当者に求められるのは、“攻めの発想”です。もちろん、これまで行ってきたリスク管理も大切ですが、PRに大きな役割が求められる中、守ってばかりいては、広報部門の社内価値は低下してしまいます。

 一方で、PRが売上につながらなければ意味がないかと言えば、私はそうではないと考えています。特に現代はカスタマージャーニーが複雑化しているため、企業全体の総合戦の結果として商品・サービスが購買されます。つまり、購買までのプロセスを因数分解して、どこにPRが貢献できるのかを理解して取り組むことが大切なのです。

 一方で、PRエージェンシー側に求められるスキルは、「消費者インサイト」の理解でしょう。攻めのPRを行う際、これが鍵になります。エージェンシーは、これまでメディアとのリレーション構築を中心業務としてきたため、メディアのインサイトの理解はあるのですが、今後はそれに加えて消費者のインサイトも把握できるようにならなければいけないでしょう。
 

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