音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #38

脱・OJTという名の放置、マーケター育成で大切な3つのポイント【音部で壁打ち】

前回の記事:
止まらない価格上昇。企業は「値上げ」を消費者にどう伝えるべきか?【音部で壁打ち】
 

OJTとOFTの最適なバランスとは?

 

【質問】

マーケターの育成には、何が大事ですか? OJT(On The Job Training:実務を通じた職業教育)とOFT(Off The Job Training:通常業務から離れて行う職業教育)のバランスなど、音部さんのお考えを教えてください。

 春の人事異動で、マーケティングに初めて関わるという部下が配属されてきた方や、複数の新人を迎え入れたマーケティング部門などもあることと思います。

 マーケティングキャリアのいいスタートを切るためには、希望に満ちた本人たちの士気に加えて、受け入れ側が用意しておくべきこともあります。ある企業では「育成への貢献はOJTが70%、上司のフィードバックが20%、研修が10%」と言われ、「(上司による育成努力や、組織による研修制度ではなく)OJTこそが育成だ」という方針が掲げられていました。

 この方針が奏功していたかどうか分かりませんが、OJTがただの通常業務や、ひどい場合には仕事を割り振っただけで放置となってしまっては育成とは呼べません。「エネルギーになる炭水化物」や「筋肉を構成するタンパク質」だけでなく、「ビタミン」や「ミネラル」などを摂取することで身体が健やかに維持されます。同様に、「上司のフィードバックや研修制度などの仕組み」は、育成に大きく貢献する「仕事の経験」を「有意義な経験値」に転換するために不可欠な触媒的な役割を果たさなくてはなりません。

 そうした触媒的な役割は、OJTでの10の経験が、15や20の経験値になる係数として機能します。そこで、いくつかの企業で実践してきた、新人育成の3つのヒントを共有しようと思います。
 

1:目指すべき「2年目」の姿を明確にする


 本連載で、言及されることの多い「目的の明確化」は、戦略やマーケティング活動だけでなく、育成においても重要です。それぞれの個人が「5年目にどうなりたい」、「10年目にどうありたい」、その先に「いずれどのような立場でどういった仕事をしたい」といった議論を面談などで交わされることがあります。「キャリアビジョン」などと呼ばれますが、上司や会社と共有しておくことは次回の配属先を決める際だけでなく、日々の仕事の仕方などにも影響します。同じ仕事や作業でも、自分のキャリアビジョンへの影響を理解することでより多くの経験値を稼げそうです。

 新人の場合には、個々人が目指すべきものに加えて、組織として「2年目までに獲得しておいてもらいたいスキルや経験」を定義しておきましょう。見過ごされがちですが、新人が有意義な1年間を過ごすためには、ひとつ上の年次である2年目の先輩が立派に育っていることも重要です。優秀な2年目は、新人にとって分かりやすい目標となり、またカジュアルなアドバイスなどももらいやすいからです。

 通常のマーケティング組織では、マーケティング関連の社内手続きの理解、ブランドの定義や中期短期のビジネス目標の把握、市場シェアなどの分析、質的あるいは量的な消費者理解の方法といった領域で、1年目の間に経験しておくべきことなどを示します。

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