日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #28
主人公のキウイが他の健康法を過激に批判、ネットで話題の人気CMを分析
鉄道での不注意な事故防止に、ひどい死に方を描いた大人気作
他の方法を次々と描写して、自分たちの伝えたいメッセージへ繋げる、という内容で思い出したのが、メトロ・トレインズ・メルボルンの「Dumb Ways to Die(ひどい死に方の数々)」です。
カンヌライオンズ2013でフィルム部門グランプリ他5冠に輝いた、この伝説の大人気動画をご紹介していきましょう。
この動画は、メトロ・トレインズ・メルボルンという豪州メルボルンの通勤鉄道公社によるキャンペーンです。酒酔いや不注意から線路に落ちて死亡する若者が絶えないことから、地下鉄などで死ぬようなことのないように、特に若者に対して注意を促しました。
様々なメディアを使って行われたこのキャンペーンのコアとなるのは、3分ほどのアニメーション動画です。可愛らしいキャラクターたちが、ユーモアあふれる「Dumb Ways to Die(ひどい死に方の数々)」を、覚えやすく楽しい歌に乗せて描いていきます。
例えば、炎天下で髪が熱くなり過ぎて燃え出したり、熊をつついて食べられちゃったり、ピラニアのいる河に楽しそうに飛び込んで餌食になったり、トースターにフォークを差し込んで感電したり、毒蛇をペットにしようとして噛みつかれたり、なんだか分からないボタンを好奇心だけで押して大爆発が起こったり、狩の季節に鹿の格好で森に行って撃たれたり、蜂の巣を持て遊んで刺されまくったり、エトセトラ、エトセトラ。
そして最後には、「地下鉄などの線路にうかつに降りてはいけない」という、本来、伝えたかったメッセージが表現されます。
深刻になりがちで、だからこそ若者層に届かなかったこの手のキャンペーンを、ストレートでキツいメッセージを送りながらも、各国で大人気となるほど(日本でも、自主的に動画に日本語訳を付けている人までいます)親しみのある音楽と可愛らしいアニメーションで、効果的に描いた名作と言えるでしょう。
今回のゼスプリのテレビCMは、名称などで特定はしていないものの、サウナスーツや健康ドリンク、健康になれる石など、世の中に存在している多くの健康法を完全に否定して“ディスって”います。
それでもアニメーションの楽しい雰囲気と、否定している健康法の真逆にある商品を訴求する確かなコンセプトのおかげで、不快な気持ちにはなりません。いろいろと参考になる秀逸な事例だと思います。
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