日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #29

「いったん、しおりを挟みます」一時閉店を巨大しおりで表現。三省堂書店の“らしさ”が話題に

 

クリスマスの感動CM、名作は「モンティ・ザ・ペンギン」


 広告すべき商品やサービスの“らしさ”をみごとに描いて高い評価を得た海外の事例に、「モンティ・ザ・ペンギン」と題されたテレビCMがあります。

 英国の老舗デパートであるジョン・ルイスは、毎年クリスマス・シーズンになると感動的なテレビCMを流すことで有名なのですが、その中でも、2014年のクリスマス・シーズンに放映された「モンティ・ザ・ペンギン」はいまだに名作と言われ続けている作品で、2015年カンヌライオンズでも、フィルム・クラフト部門でグランプリを獲得しています。

 主人公は5~6歳と思われる少年と、遊び仲間のペンギンです。とても仲良しな少年とペンギンは、お出かけする時もいつも一緒です。でも少年は、ペンギンが時々寂しそうにしていることが気になります。テレビの中のラブシーンや、街でカップルを見かけた時に寂しそうにしているのです。少年は「そうか!」と気づきます。彼は「ガールフレンドが欲しいのだ!」と。

 クリスマスの日。両親に頼んだのでしょう、少年が仲良しのペンギンに紹介したのは、雌のペンギンでした。嬉しそうな仲良しのペンギン!と、そこで、少年の手に持たれていたのは、2体のペンギンの縫いぐるみだったのです。そうです。仲良しのペンギンも、本当は縫いぐるみだったという種明かしになります。

 そこに、「誰かがずっと夢に見て来たクリスマスを、プレゼントしよう」というコピーが現れます。
 


 
 少年からすれば、仲良しのペンギンに、彼が夢見ていたであろう雌ペンギンをプレゼントすること、少年の両親からすると、そうした夢を思い描いている息子に、もう1体の縫いぐるみのペンギンをプレゼントすること。

 クリスマス・プレゼントというものが持つ、エモーショナルな側面、その“らしさ”をみごとなまでに描いた名作テレビCMです。

 扱う商品やサービスの“らしさ”を上手に描いて共感を誘うやり方は、広告コミュニケーションの世界ではまったく目新しくはない、むしろ王道の手法です。でも、このアプローチは、上手に伝えることが出来さえすれば、けして古びない、チャレンジしてしかるべきものなのだと、改めて思い知らされました。
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