国連難民高等弁務官事務所の広報日記 #02
サッカーW杯ロシア大会の出場国で、「難民問題」を抱えているのは何カ国?【UNHCR 守屋由紀】
決勝戦を戦ったフランスとクロアチアの難民問題
2017年末時点で、内戦などで国外に逃れた難民や難民申請者、国内避難民が約6850万人になり、過去最多を更新しました。現在も増え続けています。これは世界全人口の1%弱。実に100人に1人が移動を強いられ“難民”あるいは迫害や紛争を逃れるため国内避難民になっていたり、他の国に庇護を求めていたりするという計算になります。
前回書きましたが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広報として果たす主な役割は、「難民」と「UNHCR」について多くの人に知ってもらうことです。
ひと言で「難民」と言っても、正しく理解できていない方が大多数ではないかと思います。
では、問題です。皆さんの記憶にもまだ新しいと思いますが、
ロシアで行われた2018FIFAワールドカップに出場した国の中で、「難民問題」を抱えている国は何カ国ありますか?
- 10カ国
- 22カ国
- 32カ国
答えは「③」。全ての国です。
ワールドカップに出場した国はもちろん、いまや全世界の国で「難民問題」を抱えていない国はない、と断言できます。
すべての国に言及することはできないので、まずは決勝戦を戦ったフランスとクロアチアが抱えている難民問題についてお話ししましょう。
欧州の難民受け入れ問題の指標となるフランス
まずはフランス。EU(欧州連合)加盟国の中でフランスは、これまで多くの難民を受け入れてきましたが(ここ10年で約34万人、昨年EU内では2位)、その政策に対して国内の世論は真っ二つ。2017年に行われた大統領選の争点にもなりました。結果は、従来の難民政策を継承するマクロン氏が大統領に選ばれましたが、昨年末の時点で難民申請者が10万人を超えた事態を受けて、マクロン大統領は方向転換を余儀なくされ、議会は今年4月、難民関連の規制を強める法案を可決しました。
先進的な難民政策を進めるドイツと並んでEUの雄であるフランスの選択は、今後の難民受け入れ問題を占う上で、一つの指標になると思います。
MVP獲得のモドリッチ選手も難民出身
次にクロアチアです。同国チームのキャプテンで、MVPを獲得したモドリッチ選手は難民出身です。1991年に勃発したユーゴ紛争。6歳だったモドリッチ選手は、家を離れ避難を余儀なくされました。戦火の下でサッカーをしていたそうです。
シリア難民などが国を離れ、多く最初にたどり着くのは周辺国のトルコ、レバノン、ヨルダンなどですが、欧州を目指す人が向かうのは難民受け入れに寛容で、経済的にも安定したドイツです。
ギリシア→マケドニア→セルビア→クロアチア→スロヴェニア→オーストリア→ドイツと難民が避難していく道は「バルカンルート」と呼ばれました。クロアチアはこのルートの途上にあります。
このように「ワールドカップ」というキーワードで難民問題を考え直すと、実にいろいろなことがわかってきます。
ならば「日本の難民問題って何?」という疑問がわくかもしれません。