【速報】カンヌライオンズ2022現地レポート #04

カンヌライオンズ2022の主な受賞作を紹介、見えてきた大きな傾向は「DE&I」

前回の記事:
カンヌライオンズ2022から見えた傾向、再確認された「従来型」広告表現の力
  カンヌライオンズから戻って来て、しばらく時間が経ちましたが、急ぎ第4回目のレポートをお送りします。前回と、最終回となる今回は、主な受賞作とその傾向についてご紹介しています。

  2022年、私が感じた3つの特徴は、①社会問題の解決をテクノロジーの活用で。 ②ヘビーな話題を軽めのタッチで身近に。 ③クラシック広告の再評価です。

  この③については前回ご紹介したので、今回は①と②について解説していきます。①と②はいずれも、DE&Iと呼ばれるテーマに関わる事例や作品でした。
 

6つのテーマの中でも「DE&I」の存在感が強かった

 
メイン会場を道路側から見たところ。
 
フリンジと呼ばれるビーチ沿いの会場、ツイッター社の例。

  今年のカンヌライオンズは、次の6つのテーマが掲げられていました。
  • Sustainability(サステナビリティ)
  • Diversity, Equity, Inclusion(DE&I)
  • Data and Technology(データ&テクノロジー)
  • Brand Creativity and Effectiveness(ブランドのクリエイティビティと効果)
  • Talent(人材)
  • Business Transformation(我々の業界の変化)
 
事務局側が設定したカンヌ・ライオンズ2022の6つのテーマ(公式ホームぺージより)。見出しの部分は、私が紹介したキーワードのさらに詳しい解説になっている。

 この中でも「DE&I(多様性と公平性と包摂性)」が、ソーシャルグッドやブランドパーパスの流れを汲みつつ、最も強くフォーカスが当てられていたように感じました。

 昨今、DE&Iはカンヌライオンズ以外でもキーワードになっていて、語りだすとなかなか長くなりそうなのですが、なんとか身近に理解しようとすると、「多様な地域のあらゆる人々の不平等を解決すべし」と言えると、私自身は考えています。

 さてそうしたDE&Iの流れの中で、①と②について具体例を挙げながら、解説していきましょう。
 

カンヌライオンズ2022の傾向①:社会問題の解決をテクノロジーの活用で


 この傾向の代表作は、クリエイティブ・データ部門グランプリ他を受賞した「DATA TIENDA」です。TIENDAはスペイン語で“ストア”といった意味のようなので、施策名は“データ・ストア”となります。

 We Capitalという女性起業家らを支援する組織が、メキシコで行った事例です。ちなみに、この傾向に属すると思われる受賞作の多くは、いわゆる先進諸国以外が舞台になっていました。

 メキシコの女性の83%は公的信用履歴がなく(多くのメキシコ人女性はクレジットカードを持っていない)、ローンを申し込んで起業するなどの経済的自立を得る機会がないと言います。しかし、地元の店での支払いなど非公式の信用履歴は存在していました。

 WeCapitalは、そうした女性の地元店での支払い行動を分析、情報を取集するためのプラットフォーム「Data Tienda(データ・ストア)」を立ち上げ、女性の信用履歴を作成しました。そのことによって、23%の女性が起業などに当たっても必要になる、マイクロクレジットを受け取ることができました。

 メキシコにおける「女性の経済的自立の不備」を、嘆いたり感情に訴えたりするのではなく、テクノロジーを活用することで実際的な解決に繋げたことが評価されたのだと思います。
 
「DATA TIENDA」の事例ビデオ

 さらに、クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門グランプリなどを受賞した「PINATEX」も、この特徴に連なる事例です。

 パイナップル生産者DOLE(ドール)が、それまで廃棄されていたパイナップルの葉の繊維を活用、動物虐待などがなく持続可能な革の代替品とし「Pinatex(ピニャテックス)」というテキスタイルを開発したというものです。
 
「PINATEX」の事例ビデオ

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