TOP PLAYER INTERVIEW #32
「お客さまの喜びこそCRMの本意」ファミマ 足立光氏 GDO 志賀智之氏対談【後編】
2022/08/29
- 足立光,
- マーケティングオートメーション,
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ファミリーマート CMOの足立光氏は、「CRMは幻想だ」という否定的な発言をしたことが、過去のビジネス系メディアのインタビュー記事の中に掲載されています。同氏は、マーケティング領域を中心とする多くの人から、デジタルマーケティングやCRMに対して否定的な意見を持っていると誤認されてしまっていたことがわかったと、ご自身のFacebookで投稿し話題になりました。そこでCRMに知見を持つゴルフダイジェスト・オンライン(GDO) 執行役員 CMO/CIOの志賀智之氏と対談。前編では、お二人が考えるCRMとは何か、CRMでポイントとなることはお客さま一人ひとりとのコミュニケーションであることなどについて語りました。後編では、さらに本質的な話に入り、本来のCRMとは何か、お客さまを喜ばせるための施策や意識していること、データ活用する目的などについて迫りました。
※前編は、こちらから
※前編は、こちらから
お客さまが喜ぶことを永遠とやり続けることが本来のCRM
――ファミリーマートの5月度の月次営業報告では、全店売上高が103.8%と3カ月連続で前年を上回っています。おそらく何度も訪問する顧客が増えて、LTVも上がっているのではないかと推測します。CRMという観点では、どういった施策をしていますか。
足立 皆さんがCRMと考えるような施策は何もしていません。一部、アプリで購買行動に応じたクーポンを出してしますが、その対象人数はお客さま全体をカバーするほどではないので、あくまで改善のレベルでしかありません。
私たちが取り組んでいるのは、お客さまを想像して、その方々に喜んで頂けることを、継続的に行っていくことです。たとえば40~50代の男性や、お子様のいるお母様、シニア層など、それぞれのセグメントに喜んでもらえるであろう施策を順番にしているだけです。私はお客さまの反応を見ながら、お客さまの声を聴きながらそれらを永遠に実施し続けることが大事だと思っていますが、「それがCRMか」と言われると微妙なんですよね。
エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)
足立 光氏
志賀 たしかに、それは個人を見ているわけではないので、CRMと呼んでいいかは分からないですね。でも、足立さんがおっしゃることは、とにかくお客さまが喜ぶ状態をつくっていくことですよね。「お客さまが何に喜ぶか」という仮説を立てて検証していくことが本来の意味のCRMでもあると思うんですよね。
足立 お客さまに本当に喜んでもらえることを永遠にし続けることは、終わりがないため大変ですよ。でも、それが他社ではなく、ファミマに来る理由になるんです。それが評価されているからファミマの業績が伸びているのだと思います。
志賀 最近のファミリーマートの品揃えを見ると、いろいろとダイナミックに変わり、商品力も上がりましたよね。足立さんが入られてから刷新したプライベートブランドの「ファミマル」もそうです。
足立 皆さん、ファミマの商品が良くなってると思っているでしょ。でも実は前から良かったんですよ(笑)。まさに「イメージ」なんですよ。そのイメージを変えるのは、簡単ではありません。少しずつ変えていくということを、一生懸命に取り組んでいます。
志賀 最近、Netflixの映像作品「ストレンジャー・シングス 未知の世界」とコラボレーションしたソックスとハンカチを発売したことも話題になりましたね。
足立 はい、ファミリーマートには「ストレンジャー・シングス」のファンと「UFO濃い濃いモンスター焼そばパン」のファンの方が、同じタイミングで来店するんですよ(笑)。全く異なる層なので、それぞれの方に喜んでもらえるようにしなければいけません。
志賀 私たちは小売業なので、品揃えや印象、売り方を変えて、お客さまから「気が利いているね」と言われることが大切ですよね。いいリアル店舗の店員さんは、馴染みになると役立つ情報を教えてくれたり、フォローアップのコミュニケーションをしてくれたりするじゃないですか。
私たちも同じようにプレー前にゴルフ場や天気の情報を送ったり、プレー後には感想を聞いたりしています。デジタルを使って購入を促すだけではなく、そもそもお客さまの役に立つようなコミュニケーションが重要です。誕生日クーポンも実施していますが、結局は買ってほしいという文脈なので、それ以外のコミュニケーションもしないといけません。そうしたコミュニケーション全体で購買を喚起していくというのが、私たちのCRMですね。