日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #30
自社ではなく、ビジネス仲間を応援。サントリーの秀逸企画「人生には、飲食店がいる」
コロナ禍に苦しむ飲食店を応援したハイネケン「シャッター・アド」
海外事例では、ビールメーカーであるハイネケンがコロナ禍で閉店を余儀なくされた飲食店(バー)を支援した「Shatter Ads(シャッター・アド)」があります。
2020年~2021年のカンヌライオンズでアウトドア部門グランプリを受賞し、以前のカンヌライオンズ超速報レポートでも紹介しています。
コロナ禍の初期にロックダウンされて、閉店を余儀なくされたバーを応援しようと、ハイネケンは通常のアウトドアのメディア費を削減し、その資金で多くの店舗のシャッターに広告を載せて直接その掲載料を支払いました。
「閉店の困難さ」の象徴でもあるシャッターを使って、困難に直面している飲食店を応援するという、非常に気の利いた施策だと思います。
広告にはハイネケンからのメッセージとして、例えば、「See this ad today, enjoy this bar tomorrow. (今日はこの広告を見て、明日はこのバーで楽しもう)」といったコピーが書かれています。この施策は、ブエノスアイレス、マドリッド、バルセロナ、ミラノ、ミュンヘン、ベルリンなど各国の5千以上のバーに対して行われて、計750万ユーロ(約10億円)がお店に直接支払われました。
結果として、すべての店が再オープンを果たすことが可能となり、ハイネケンにとっても、それまでの伝統的なアウトドア広告に比べて40%増のメディア価値をもたらしたと言います。
私は、この受賞作を見た時に、これぞ“広告的機転”と嬉しくなりました。広告に出来ること、広告ビジネスに出来ることは、まだまだたくさんありそうだと感じました。
ハイネケン「シャッター・アド」の概要が分かる事例ビデオは、こちらのYou Tubeで見ることができます。
自社商品の良いところを一生懸命にメッセージとして発信したくなるのは、あたりまえのことでしょう。しかし、商品は買ってもらい消費してもらう場所がなければ、決して売れません。思い切って、そうしたビジネスの仲間を応援する施策を打ち出すことを考えてみるのも、時にはとても効果的なのではないでしょうか。
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