音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #42

外資系と日系企業、マーケター育成で優れているのはどちら?【音部で壁打ち】

前回の記事:
大学で学んだマーケティングの知識は、社会でも役立ちますか?【音部で壁打ち】
 

会社に就く日系と、スキルに就く外資系

 

【質問】

多くの外資系企業では、新卒採用の段階からマーケティング職として募集が行われています。一方で、日系企業は一部の企業を除いて、総合職として募集されています。マーケターのキャリアという観点から、外資系企業と日系企業それぞれが優れていること・劣っていることがあれば、教えてください。

 外資系企業でキャリアを始め、日系企業でも働いた経験から観察してきたことをお話ししたいと思います。キャリアや働き方の領域は人生観の影響も大きく、実にさまざまな考え方があるでしょう。そもそも外資系と日系というくくり方がかなり大雑把なうえ、ステレオタイプにも陥りがちです。単純に一般化すべきものではないと考えますが、いくばくかでもヒントになれれば幸いと、ひとつの視点を共有したいと思います。
 

外資系の組織と日系の組織


 就職についてよく言われることですが、日本社会では「会社」に就くのに対し、米国などでは「職種」に就くという違いを感じることがあります。同じ会社のなかで多様な部門・領域の仕事をする可能性が高いか、あるいはむしろ同じ領域の仕事を異なる会社で続ける可能性が高いか、という違いです。外資系でもジョブローテーションや職域の変更はありますし、日系企業でも専門家としてキャリアを構築されている方もいますから、「可能性が高い」ということであって、断定的なものではありません。

 終身雇用を前提にジョブローテーションを人材管理の主軸とする組織では、社内事情に通じ、社内の人脈を強化して「会社に関する専門性」を充実させ、貢献を高めていきます。事業や組織の経緯、社内の人々をよく知っていることで、いろいろな仕事がしやすくなります。どの部門に異動しても、会社への帰属意識が高く、同じ歴史や物語を共有し、なにがしか知っている人もいて馴染みやすいでしょう。こうした人的なつながりは、リーダーシップを期待される立場になっても有効に機能します。同時に、このような組織ではマーケティング課長であっても、営業部門から異動してきたてで、初めてマーケティング業務を担当するというケースもあります。

 入社の段階で部門別に分かれている組織では、特定領域に関連した経験値を高めることで「スキルの専門性」を充実させて貢献を高めていきます。マーケティングや営業、ファイナンス、あるいは人事やサプライチェーン、IT情報システムなどといった各領域の専門性を確立していきます。こうしたスキルや経験値は社内人脈などに比べて、社外でも適用できることが多そうです。職位があがるにつれ、領域ごとの専門性に加えてチーム全体のアウトプットを高めることも期待されていきます。このようなリーダーシップも、スキルとしてトレーニングが用意されていることが少なくないでしょう。この種の組織では部門長であっても、転職してきて日が浅く、気楽にランチに誘う相手さえいないということもあります。

 これらの違いは合意形成のプロセスや、社内の共通言語の確立度合いなどにも関係します。どちらがタマゴでどちらがニワトリなのか、定かではありません。相互に関連し合い、影響しあってきた結果であるようにも思います。

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