日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #34
「制約は舞台」広告クリエイターの技が炸裂した漫画『ザ・ファブル』の駅張りポスター
スキップできるYou Tubeを逆手に取った保険会社の広告
制約を逆手に取った海外事例として頭に浮かんで来るのは、カンヌライオンズ2015フィルム部門グランプリを受賞した“Unskippable”です。
何本かのシリーズなのですがいちばん笑える「Family篇」を、少し詳しく見て行きましょう。冒頭のシーンは4人家族での幸福そうな食事のシーンです。お母さんが、「私に感謝しないで、節約に感謝して」(節約のおかげで美味しいご飯が食べられている)と発言します。ここまでが2~3秒で、登場人物は、例えばスパゲティをフォークで巻き上げた状態のまま、ストップします。そして、画面の中央に大きくGEICOの文字が登場します。GEICO(ガイコ)は自動車保険などを扱う、アメリカでは有名な会社ですね。
ここから「あなたはこのガイコの広告をスキップ出来ません。なぜなら、この広告はすでに終わっているからです」というナレーションが入ります。ここまで約6秒。機能としてはスキップが可能になる時間ですね。ナレーションはさらに、「15分あれば(15分の手続きで)、自動車保険が15%以上節約できます」と商品情報についても言及。10秒~11秒辺りでナレーションが終わり、手前から大型犬が近寄って行きます。
犬は、人間がストップしているのをいいことに、まず父親のフォークからスパゲッティをムシャムシャと食べ始め一通り食べ尽くすと、隣の小さい娘のフォークへ。何をされても、人間は不自然にストップしたままです。皿を蹴散らしながら今度はこれまた小さい息子のところへ。皿からフォークから食べ尽くす途中で、ミルクのコップをなぎ倒します。最後は、母親の配膳用のボウルにまで首を突っ込みます。ここまで60秒あまり。いやぁ、笑えます。面白くって、確かにアンスキッパブル(スキップできない)!
考えてみれば、どんなビジネスにだってなにがしかの制約は付きものでしょう。「この制約さえ無ければ、もっといい仕事が出来るのに!」とストレスに感じている人も多いのではないでしょうか? そんな時は、こうした事例のように、制約を舞台だと捉え、逆手に取ることを試してみるのも良いかもしれませんよ。
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