RYUKYU note #13前編

沖縄アイス「ブルーシール」が70年以上も愛されてきた理由を紐解く【代表取締役 山本隆二氏 インタビュー】

前回の記事:
快進撃の「やっぱりステーキ」、変わらぬ信念とアイデアでコロナ禍でも黒字化できた秘策に迫る
  沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来に繋がるストーリーをひも解いていきます。

 第13回は、「アイスがもたらす笑顔のために」という理念を掲げ、沖縄を軸にアイスクリームを提供する「ブルーシール」を運営するフォーモスト ブルーシール 代表取締役の山本隆二氏が登場。山本氏は、ポッカコーポレーション マーケティング本部統括部長や、ポッカサッポロフード&ビバレッジ 事業統括本部 飲料事業部部長などを経て、2020年にフォーモスト ブルーシールへ転属。今回のインタビュー前半では、圧倒的なブランド力を誇るブルーシールが70年以上続く理由からうちなーんちゅ(沖縄県民)に愛され続ける秘訣などを聞きました。
 

観光客が興味を持つ理由は、沖縄での圧倒的なブランド力


――ブルーシールは沖縄県内だけでなく、県外の人からも沖縄を代表するブランドだと認識されています。その状況をどのように確立していったのでしょうか。

 まず前提として、「うちなーんちゅ(沖縄県民)」がブルーシールを「沖縄のブランドだ」と支持してくれるので、沖縄に観光で来た人も「私も食べてみたい」と思ってくれるという背景があります。沖縄の方言で言うと、ブルーシールは「わったーアイス」なんです。「わったー」とは、「我々の」という意味になります。

 もしブルーシールが観光客に向けた戦略だけにシフトした場合、ブランドが空洞化してしまう恐れがあると考えています。我々は、全国展開しているナショナルブランドと勝負しているのではなく、うちなーんちゅのマインドシェアだけを意識しているんです。沖縄で圧倒的なブランド力を持っているからこそ、観光客が興味を持ってくれると考えています。
  
フォーモスト ブルーシール 代表取締役
山本 隆二 氏

――あくまでも、沖縄のブランドであるという意識を大事にしているのですね。

 そうです。そもそも沖縄という土地に育ててもらっているブランドなので、沖縄以外の地域で大きく戦えるとは思っていないんです。沖縄が沈めば、我々も沈むし、沖縄が発展すれば、我々も発展できるというブランドです。そのため、沖縄の経済が少しでも活性化するような取り組みを行なっているんです。

 たとえば、沖縄で黒糖が大量に余っていると聞けば、我々が買い付けてアイスをつくり、本土の優良企業に売り込みます。ブルーシールのブランドが付いているからこそ、本土の人が購入してくれます。余った黒糖を沖縄県民の約140万人で消費するよりも、日本国民全体の約1億2000万人で消費するほうが貢献度は高いです。

 また、沖縄はコーヒー豆やカカオ、バニラなど、さまざまな農産物をつくっています。それらを我々が商品化して、本土の人に販売できます。我々は、沖縄から本土に向けて先頭に立ち、どんどん沖縄ブランド価値向上に向けチャレンジしようと思っています。

 チャレンジで収益を獲得し、沖縄の学校給食の支援などCSR活動に充てたりしています。ブルーシールというブランドを県内のみならず、多少なりとも本土で通用する状態にしておかなければならないと考えているのは、そのような理由からです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録