日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #35
最先端デジタル商材こそ人間味のある表現。昭和の人情を彷彿とさせるリクルート「Airワーク」人気CM
オランダの銀行・INGがレンブラントの次回作を発表?
海外の事例でも、デジタル化をメッセージするために、思い切りアナログな素材を活用したものは、少なくありません。なかでも有名なのは、「ネクスト・レンブラント」と呼ばれる事例です。2016年カンヌライオンズでは、サイバー部門グランプリ他を受賞しました。
実施したのは、世界大手の銀行である、オランダのING。同社は、そのビジネスで数々のデジタル・テクノロジーを導入し、最もイノベーティブな銀行を標榜しており、そうしたビジネス上のビジョンの認知・理解を推進するための施策でした。
「ネクスト・レンブラント」では、自国オランダの17世紀の偉大な画家レンブラントが、もし次回作を描いたとしたら、という想定で、デジタル・テクノロジーを駆使して、一枚の絵をつくり上げました。
レンブラントが生涯で残した346作品を詳細に分析し、構成の仕方から絵の具の盛り方までをデジタル・データ化。そのデータを元に当時、最新の3Dプリンタを使ったデジタル・プリンティングによって、いわば347番目の作品とも言える“次のレンブラント”を、本人没後347年目につくり出したのです。
この絵は、アムステルダムの美術館に展示され、同時にWeb上で制作過程を公開し、人々が詳細に見ることができるようにしました。制作過程の中でも、絵具の盛り方について、地形の等高線の技法を用いて分析・データ化している辺りは、とても印象に残っています。
最新のデジタル・テクノロジーの活用により、アナログの極致であるような17世紀の巨匠の、“次の一作”をつくり出す。そのことにより、自分たちの銀行のサービスが最先端デジタル・テクノロジーの活用で、いかに人間的なサービスを充実させているかということを、メッセージしたのだと考えられます。
最先端デジタルに関する話題だからこそ、なるべくアナログな表現や素材を選ぶ。デジタル化は、人々のアナログな日々のために存在するのですから、それはひとつの大正解だと思います。
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