マーケターズ・ロード 石橋昌文 #01

ネスレ日本 石橋昌文氏がCMOを退任。38年間でたどり着いたマーケティングという仕事の価値

  ネスレ日本に新卒で入社し、近年は専務執行役員 CMOとして同社のマーケティングを率いてきた石橋昌文氏が2023年1月で同社を定年退職する。第一線で活躍してきた石橋氏に、これまでの38年間の会社人生を振り返ってもらいながら、今後のマーケティングに何が求められるのか、後進へのアドバイスをもらった。第1回は、現在の心境と、これまでの経験から見えてきたマーケティングの価値について語ってもらった(全4回)。
 

4つの会社に勤めたのと同じ経験を得た38年間


―― 2023年1月31日をもってネスレ日本を退職されますが、いま率直にどのような思いでしょうか。

 2023年1月末で新卒から38年間勤めたネスレ日本を退職します。いまの率直な感想は、「38年という長期にわたり、よく同じ会社で勤め上げたな」という気持ちですね。一方で同じ会社と言っても、海外を含め、さまざまな場所で仕事をさせてもらいましたので、複数の会社で仕事をしたような感覚です。

 ネスレ日本には、1985年に新卒で入社しました。その後、5年間は日本で営業を担当し、1990年から2年間はイギリスに赴任してコンフェクショナリーカテゴリーの営業に携わりました。そして帰国してからは、ネスレマッキントッシュ(現・ネスレ日本 コンフェクショナリー事業本部)という子会社で7年間、コンフェクショナリーのマーケティングに携わりました。その後はスイス本社のコンフェクショナリーSBU(戦略的ビジネスユニット)に2年間ほど在籍し、2001年に帰国。再びコンフェクショナリーのマーケティング部門に戻って、2009年からはマーケティングとコミュニケーションにフォーカスした仕事に就き、現在に至ります。
 
石橋 昌文 氏
ネスレ日本 専務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー

1985年ネスレ日本に入社。営業本部、ネスレUKを経て、1992年 ネスレマッキントッシュ株式会社 (現コンフェクショナリー事業本部)。2年間のネスレスイス本社での勤務を経て、2005年 同 マーケティング統括部長。キットカットの受験生応援キャンペーンに携わり、成功に導く。2009年ネスレ日本 常務執行役員 コミュニケーションズ&マーケティングエクセレンス本部長、2012年チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)に就任。

 ネスレ日本、ネスレコンフェクショナリー、ネスレUK、スイス本社と、4つの企業体で働くことができました。また、それぞれで担当した仕事内容も異なっていたので、4社で働いたのと同等の経験値を積むことができたと考えています。実は、38年間勤務する中で何度か辞めようと思ったこともありました。しかし、そういったタイミングで新しい機会を掴むことができ、常に刺激を受けながらチャレンジできたので、ここまで続けることができたように思います。

 たとえば、ネスレマッキントッシュでキットカット以外の小さなブランドのマーケティングを担当しているときは7年間取り組んでもなかなか成果がでず、精神的なプレッシャーを感じていました。そんなときに、スイス本社で人を探しているという話があり、当時の上司から「チャレンジしてみるか」と聞かれたので、環境を変えようと思って手を挙げたんです。

 その募集枠は2人でしたが、私のほかにイギリス人とデンマーク人が手を挙げており、スイスで上司になる人との面接で誰が行くか決まることになりました。ほかの2人が優秀であることは知っていたので、正直なところ分が悪いと思っていましたが、配属先の部署にすでにイギリス人が多かったせいか、私とデンマーク人の採用が決まりました。私の前任者がマレーシア人だったこともあって、アジアの人間のプレゼンスが欲しかったという意図があったのかもしれません。ある意味、運が良かったとも言えますね。

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