マーケターズ・ロード 石橋昌文 #01
ネスレ日本 石橋昌文氏がCMOを退任。38年間でたどり着いたマーケティングという仕事の価値
最も大きな成果は、キットカット「受験生応援キャンペーン」
私は38年の会社人生の中で、やるべきことをやり、それなりの成果を出せたと思っています。特に2001年から携わったキットカットで「受験生応援キャンペーン」をスタートさせて、シェアを伸ばしたことが一番の成果だったと自負しています。もちろんチームで一緒に取り組んできたことですが、その中でキャンペーンをリードできたことは大きな経験になりました。
このキャンペーンによって、キットカットというブランドの消費者からの受け取られ方は、20世紀と21世紀でかなり変わったと思います。受験生応援キャンペーンを始めたばかりの頃のキットカットは、当時の高校生からすると「お母さんがスーパーで購入し、家に置いてある美味しいおやつ」という捉えられ方でした。つまり、美味しいけれど、自分のブランドだというパーセプションではなかったんです。それを受験生応援キャンペーンを通じて、「自分たちのブランドだ」と思ってもらうことができました。
2009年に現職に就いてからは、チョコレート以外のコミュニケーションにも携わることになり、ネスカフェのマーケティング活動、特に消費者へのコミュニケーションにコミットしました。その中で、ネスカフェのブランド強化の一角を担うことができましたし、CMOとして組織のマーケティング力を高めるための人材育成にも貢献できたと感じています。
38年間を振り返って、マーケティングの仕事を続けてきてよかったなと思うことは、いろいろと面白いことができたということに尽きます。世界中でいろんな人と出会い、さまざまなブランドと関わり、数えきれないほどのキャンペーンを実施するなど、幅広い仕事に携わることができました。
また、影響を及ぼせる範囲が広いのも、マーケティングという仕事の面白いところです。仮に営業であれば、営業本部長にならなければ、全国の顧客を見ることはできません。しかし、マーケティングであれば、どんなブランドでも基本的には全国規模で展開されているので、どのレイヤーで、どの商品を担当しても、全国の顧客を相手にすることができます。そういった点は、マーケティングという仕事だからこそ、経験できたことだと思いますね。