マーケターズ・ロード 石橋昌文 #02

伝説のキャンペーン「キットカット 受験生応援キャンペーン」は、なぜ全国的なムーブメントを創出できたのか

 

受験生応援のムーブメントを創出したキットカット


 キットカットの受験生応援キャンペーンは、2003年1月から開始しました。この企画がフックとなり、その後、菓子メーカーに留まらず、さまざまな企業が受験生応援キャンペーンをスタートさせました。スーパーやコンビニでも受験生応援の売り場ができ、まさに全国的なムーブメントをキットカットがつくりました。それから約20年間ずっと、受験生を応援するキャンペーンは続いています。
  引用:ネスレ 受験生応援キャンペーン

 今の日本は少子化が進み、大学の入学希望者数が定員数を下回る“大学全入時代”と言われています。入試や試験なしで入学できるケースも増えているため、以前に比べて受験のプレッシャーを感じている人は減っているのかもしれません。もちろん、そうした状況を新しい現実として考えていかなければなりませんが、キャンペーンがスタートした20年前の受験は、まだまだ厳しい状況で、そこには緊張や不安が多くありました。

 キットカットは単なるチョコレートブランドなので、それで受験の不安を解消することはできません。ただし、誰かが受験生を応援したいと思っていても、面と向かって「試験がんばれ」と言うのは、かえってプレッシャーを与えるようで言いにくい面があると思います。そのような状況の中で、キットカットをそっと渡す、あるいはキットカットにひと言だけメッセージを書いて渡すことによって、不安を感じている全国の受験生に寄り添うことができたのかなと思っています。
  
全国の受験生に寄り添えたキットカットについて語る石橋氏

 キットカットが直接、受験生を応援するのではなく、受験生を応援したい人がキットカットを使って応援したんです。当時、我われはそのことに気づいて、受験生が入試を受けるときに宿泊するホテルや、試験会場に行くときに乗る鉄道やタクシー、受験票を運ぶ郵便局など、受験生を応援したいという想いを持ったさまざまな企業と組んだことが、一番の成功要因だったと思います。

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