マーケターズ・ロード 石橋昌文 #03

「グローバルに考えて、ローカルに行動する」 150年以上続くグローバル企業 ネスレがダイバーシティを大切にする真の理由

前回の記事:
伝説のキャンペーン「キットカット 受験生応援キャンペーン」は、なぜ全国的なムーブメントを創出できたのか
  ネスレ日本に新卒で入社し、専務執行役員 CMOを務めた石橋昌文氏が、2023年1月で同社を定年退職し、アドバイザリーに就任。第一線で活躍してきたトップマーケターの石橋氏は、38年間の会社人生の中で、どのようにキャリアを歩み、その時々で何を考え、どう実行してきたのか。第3回では、同氏が海外赴任していたイギリスとスイス本社での経験と、肌で感じた現地のダイバーシティについて語ってもらった(全4回)。
 

大きなカルチャーショックばかりの海外赴任


 1990年にイギリスで初めて海外赴任をしたときは、大きなカルチャーショックを受けました。よく言われるように、イギリス人や米国人は個人主義だということもありますが、一番大きく違いを感じたのは、自分の意見をはっきり伝えることです。

 日本では自分の意見をはっきり言うと角が立ったり、相手を傷つけたりするかもしれないと思い、曖昧な表現にしてしまうことがあります。しかし、イギリスでは言うべきところはしっかりと伝え、きちんと議論をして、その結果、みんなで決めたことはやろうという考え方でした。

 そんな日本との違いを感じながら、イギリスに在籍していた2年間は、ほとんど営業をしていましたね。セールスパーソンとしてイギリス各地を車で回り、2年間で8万キロを走行しました(笑)。辛いこともありましたが、楽しかったことを覚えています。
 
石橋 昌文 氏
ネスレ日本 専務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー

 1985年ネスレ日本に入社。営業本部、ネスレUKを経て、1992年 ネスレマッキントッシュ株式会社 (現コンフェクショナリー事業本部)。2年間のネスレスイス本社での勤務を経て、2005年 同 マーケティング統括部長。キットカットの受験生応援キャンペーンに携わり、成功に導く。2009年ネスレ日本 常務執行役員 コミュニケーションズ&マーケティングエクセレンス本部長、2012年チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、2023年1月で定年退職。現在は、アドバイザリーに就任。

 当時、担当したのは大手チェーン以外のすべてです。スーパーやコンビニなどの小売店はもちろん、問屋やキャッシュアンドキャリー(小売業や飲食業が、卸売業者の倉庫にて、現金で仕入れ代金を支払い、持ち帰る方式の「仕入れ方法」の総称)、パパママストア(夫婦や家族のみ、あるいは1~2人のパートタイマーで経営している小規模の小売店)と呼ばれる小さな独立店など、大小さまざまなお店を回り、オーダーを取って集金までしていました。日本の場合、営業は集金を一切せず、帳合問屋が集金して商社経由で支払うという仕組みだったので、その違いにも驚きましたね。

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