マーケターズ・ロード 石橋昌文 #03

「グローバルに考えて、ローカルに行動する」 150年以上続くグローバル企業 ネスレがダイバーシティを大切にする真の理由

 

無駄な施策や投資を止め、損失の回避に貢献した数ヶ月


 イギリスでは、日本に帰る直前の2、3カ月間だけマーケティングも経験しました。帰国後は、コンフェクショナリーのマーケティングにアサインされると聞いていたので、こちらでも少し勉強させてほしいと言ったんです。

 短い期間でしたが、主に2つのことを通して、イギリスのビジネスに貢献できたと思います。ひとつは、彼らがあるキャンペーンの実施を検討しているときに、過去のキャンペーンの実績とコストを計算し、照らし合わせて、そのキャンペーンには投資をしてもリターンがないからやめたほうがよいと提言したことです。それにより、そのキャンペーンは取りやめになり、損失を回避することができたんです。
  
イギリスでの貢献について語る石橋氏

 もうひとつは、ある新製品の製造プラントの増設を止めたことです。もともとは小規模でテスト的に製造するためのパイロットプラントと通常の製造プラントが1つずつありましたが、発売地域の拡大に伴い、新たな製造プラントをつくるかどうかを検討していました。

 当時、私はそのブランドマネージャーと一緒に仕事をしていたので、先行発売地域ごとの民力や、発売後の売上と発売予定地域ごとの民力をベースとした売り上げ予想を時系列ですべてグラフ化しました。それにより気づいたことは、発売初期はすごく売れるけれども、その後、売上が少しずつ落ちついていたことです。そのため、もし2つ目の製造プラントに投資をしても、最終的には持て余してしまうのではないかと考えました。

 そこで私は新たな製造プラントをつくるのではなく、地域の拡大の仕方を工夫することで、パイロットプラントと最初の製造プラントだけで賄えるようになると考え、シミュレーションを行いました。それをマーケティングディレクターに提案したところ、製造プラントをつくらないことになったんです。結局、その製品は数年後になくなっていたので、結果から見ても、かなりの損害を回避できたと考えています。

 今、思い返せば、これらはファイナンスの担当者がやるような仕事でした。しかし、当時はそれを担当する人がいなかったので、マーケティングにいた私が少しずつ取り組んだという感じでした。正直、今ではありえないかもしれませんが、自分が取り組んだことが直接、結果につながる面白さを感じました。

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