広報・PR #07

スープストックトーキョー炎上対応は、なぜ称賛されたのか? 広報専門家がポイントを解説

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「炎上」に対して企業理念に基づいた対応が絶賛


 スープストックトーキョーが2023年4月18日に「離乳食後期の全店無料提供」の提供を開始すると発表したところ、一部のユーザーから批判を受けて炎上した。「子ども連れが増えるなら行かない」や「特定の人だけを優遇するのはよくない」といった声があがったのだ。この炎上は、一部のユーザーから同社のこれまでのマーケティング戦略が「ひとり客」にフォーカスしたように思われていたことが原因として考えられるだろう。

 4月26日には声明文を発表し、これまで「Soup for all!」という食のバリアフリーの取り組みを推進してきたことなど、詳細な説明を行った。そして、その「炎上」に対する毅然とした対応が絶賛された。今回の対応は、他の企業にとっても参考になるであろう。


引用:Soup Stock Tokyo公式サイト

 この対応が受け入れられた背後には、スープストックトーキョーの過去の取り組みや企業理念があり、それが信頼性や説得力を高める役割を果たしたと考えられる。

 同社は、これまでさまざまな社会問題に取り組んできた。たとえば、地産地消を推進することでの地域産業の活性化、廃棄野菜や未利用魚を使ったサステナブルスープなど環境問題に配慮した商品の開発、グルテンフリーを好む人やベジタリアンに対応したスープの販売などが挙げられる。他にも、ハラール商品の開発、咀嚼が困難な人向けの咀嚼配慮食サービス、コロナ禍での医療従事者への食事の無償提供などがある。

 こうしたさまざまな社会的ニーズへの対応は、同社が「Soup for all!」という食のバリアフリーを推進する取り組みでもある。年齢や性別、子連れかどうかで区別せず、「世の中の体温をあげる」という企業理念に基づいて、すべての人々にスープという料理を通じて身体の体温をあげるだけではなく、心の体温をあげたいという願いがある。そのような多様な顧客ニーズに応える姿勢は高い評価を受け、顧客との信頼構築にもつながっている。

 離乳食提供に関する炎上に際して、同社はその企業理念に基づいた対応を行った。声明文ではその考えを明確に伝え、過去の取り組みと一貫性を強調することで説得力を持たせることができた。批判を受けたとき、こうした一貫性のある対応が企業の信頼性を維持し、社会的な支持を得る上では重要になる。


引用:Soup Stock Tokyo公式サイト

 過去にもユニクロが環境保護に関する取り組みを通じて、企業理念を強調することで炎上問題を克服した事例がある。2015年初頭にユニクロの労働環境や環境保護に関する問題が浮上した。このとき、同社は環境保護や従業員の福利厚生に関する取り組みを行い企業理念である「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を積極的にアピールした。批判を受けたときに企業理念を強調することで、顧客や社会からの支持を得ることができた。

 企業が理念や価値観を伝えることは、その企業の存在意義や社会的責任を明確にするために必要だ。特に炎上問題が発生すると、社会からの批判や不信感が高まる。そのような状況で、自らの理念や価値観を明確にし、それを守ることで、社会からの信頼を取り戻すことができる。

 また、炎上問題はしばしば、企業の不誠実な対応や情報の隠蔽が原因となって発生するが、企業として一貫した対応を行うことは、将来的な炎上問題を防ぐためにも重要である。

 一方で、今回のスープストックトーキョーが新たなターゲットを必要とした経営状況にも触れておきたい。私の経験上の話になるが、外食産業にとってファミリー層は「上客」とみなされていることが多い。ファミリー層は家族分の食事をオーダーするため、一度の支払い額が大きく客単価が向上する。また気に入ったお店に家族でリピートするためリピート率の向上につながる。そのため、競合他社も同様にファミリー層などへのアプローチを強化していると考えられる。

 仮に「子育てに優しい支援策」を打ち出す企業は、子育て支援策がどのような形で求められているものなのかなど、しっかりと事前に調査・検証してからコミュニケーション戦略に反映させる必要がある。

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