日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #39

森永乳業ユニーク企画「武勇伝聞いてくれる会議」隠れたニーズの発見こそ買ってもらう近道だ

 

スナック菓子がテーマ、ユーザー投稿のオンライン・ミュージアムを開設


 こうした「製品にまつわる隠れたニーズ」を掘り起こして成功した海外事例に、2017年のカンヌライオンズでPR部門ゴールドなどを受賞した「チートス・ミュージアム(Cheetos Museum)」があります。チートスは、チーズ味が基本のスナック菓子ですが、製法の関係でひとつとして同じ形がないそうです。

 そこで発売元のフリトレー社が考えた仕掛けは、リンカーンに似ているチートスとかタツノオトシゴに似ているチートスなどを、ユーザーが投稿して展示するミュージアムをオンライン上に開設することでした。

 事例ビデオなどでは触れられていませんが、おそらく、このキャンペーン以前に個人の楽しみとしてSNSなどで、「このチートス、○○に似てる!」といった投稿が散見され、それをヒントにしたのではないかと想像しています。

 同様のことをやってみたいユーザーは実は他にもいて、それは一種の“隠れたニーズ”だと考えたのでしょう。「チートス・ミュージアム」では、自分で見つけた「何かに似ているチートス」の写真を投稿して、そこに掲載され、週刊ベストに選ばれると数10万円がもらえるという企画としました(10週間実施)。
 
チートス・ミュージアムの事例ビデオは、こちらで見ることができる。

 結果として人々は、この「何かに似ているチートス探し」に熱狂し、12万7717件の投稿がありました。他にも、ギターに似たチートスやキリンみたいなチートス、自由の女神にそっくりなチートス、ナイキのロゴマーク「スウォッシュ」に見えなくもないチートスなどが続々と投稿されました。さらにフリトレー社は、NYのグランドセントラル駅にリアルなミュージアムをつくり展示も行ったと言います。

 そうしているうちに人々は、世界最大のネットオークション・サービスであるeBayで、これらの「何かに似たチートス」の売り買いまで始めるようになりました。例えば、「空を飛んでいるスーパーマン」に似たチートスが約50万円で売りに出されるなどです。この間、チートスの売り上げも週間ベースで、過去最高を記録しました。

 現代では、世の中に多くの製品情報が溢れかえっています。自社商品の魅力を一生懸命に語っても、なかなか聞いてもらえないのが実情でしょう。そうであれば、視点を変えて、ターゲットとなる人が気になっている“隠れたニーズ”にフォーカスして、その解決の場を用意しようと試みる。それは一見、遠回りなようで、その商品を気にしてもらい手に取ってもらうための案外近道なのではないか、と思います。
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