日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #40

見たことがないものを見せる。広告の王道で話題「宮崎牛 牛肉の富士山」

 

人工防腐剤の未使用でカビが生えたハンバーガーを広告化


「見たことが無い」ものを見せることで成功した海外事例に、2020~2021年のカンヌライオンズでアウトドア部門グランプリなどを受賞したバーガーキング「モルディ・ワッパー(カビの生えたハンバーガー)」があります。なお、ワッパーとは、バーガーキングの最もベーシックなハンバーガーのことです。

 巨大な屋外広告に現れたビジュアルは、カビだらけのワッパーでした。通常、企業は自社製品にカビが生えた場面を大きく提示することは、ありません。このビジュアルのそばに掲げられているのは、「ワッパー 33日目」といった文字です。さらに「合成保存料無添加の美しさ」というキャッチフレーズも目に入ります。つまり、同社のメッセージとしては、「ワッパーは防腐剤を使っていない自然な味わいのハンバーガーだ」になります。

 バーガーキングは全米2位の地位にあり、トップであるマクドナルドへの様々な挑戦で有名です。この事例でも、声高には伝えていませんが「VSマクドナルド」を強く意識していると感じます。事例ビデオでも、マクドナルドに代表される多くのチェーン店のハンバーガーは、合成保存料がたっぷり使用されているため、何日経っても保存できてしまうといったくだりが見られます。
 
事例ビデオ

 それに対して同社は、全世界で8500トンもの合成素材を除去し、合成保存料削減に努めているということです。その結果、バーガーキングのハンバーガーは、「例えば、31日目にはこんなにカビだらけになります」と訴求しました。そこに、「合成保存料無添加の美しさ」というフレーズを添えることで、時が経てばカビが生えるハンバーガーのほうが身体に良いし、自然な味わいで美味しいとメッセージしたわけです。

 Web動画も作成されており、そこでは28日目、32日目、36日目などと日付ごとに、見たことの無い「カビの生えたハンバーガー」を美しく描いています。こうした自然な経過を“美しく”見せたところがミソでしょう。
 
バーガーキングWeb動画

 メッセージを届けるために、「見たことの無い」ビジュアルを考え出し、それをクオリティを持って見せるために、さまざまな努力を積み重ねる。 「いやぁ、広告コミュニケーションの制作って、面白いなぁ」と改めて、感慨深い想いを抱きました。
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