TOP PLAYER INTERVIEW #42

「全社員マーケターであるべき」夜間美容シャンプーのヒットからI-ne独自の考え方に迫る【執行役員 藤岡礼記氏】

前回の記事:
ドラッグストア市場でシェア日本1位獲得、I-neの商品開発責任者が語る好調の背景【執行役員 藤岡礼記氏】
  「BOTANIST」や夜間美容ブランド「YOLU」などを展開するI-neは2023年4月、ヘアケアブランドの合計販売金額が、ドラッグストア市場において、メーカーシェア日本1位(※)であった。

 前編では、好調の背景とI-ne独自の「Why(なぜ)」や商品開発などについて、執行役員の藤岡礼記氏に聞いた。後編では、今後もヘアケアカテゴリーにおいて、さらなる成長を目指す「YOLU」が誕生した経緯と小売店でこれからさらに商品展開していくときのポイント、I-neの今後の展望について聞いた。

(※)国内ドラッグストア市場における単体企業別のシャンプー・リンスカテゴリー販売金額より (I-ne調べ)
 

全社員マーケターであれ


――ビジネス誌のヒット商品ランキングに選出され、累計販売数1000万個(※1)以上販売されている「YOLU」をはじめヒット商品を連発していますが、どのように新商品のアイデアを生み出しているのでしょうか。
(※1)YOLU全カテゴリの累計販売数 (2021年8月~2022年9月30 日現在)


 約3年前から定期的に実施している「全社アイデアコンテスト」で募集しています。このコンテストは、「ヘアケアカテゴリーで次に勝つブランドを考えよう」というコンセプトでスタートしました。「YOLU」は、このコンテストで2位になったアイデアを商品化したものです。


I-ne 執行役員 藤岡 礼記 氏

――なぜ、1位ではなく2位のアイデアを採用したのですか。

 「YOLU」の「夜間美容シャンプー」というコンセプトには、I-neらしさの「Why」の部分があったからです。そのコンテストで1位になったのは、絹のような仕上がりの「シルキーシャンプー」というアイデアでした。ユーザー調査で購入意向が高く、売上の需要予測ベースでも高評価でした。しかし、I-neとして大切にしている「Why」の考えがなく、私にはまったく刺さらなかったんです。「Why」とは、その商品の存在意義とも言えるパーパスのことです。

 「シルキー」は機能性があり、独自の原料を使用してはいたものの絹のような仕上がりは、他社でも商品化されており既視感を感じました。その点、睡眠中の髪ダメージに着目した夜間美容シャンプーの「YOLU」には新しさがあったのです。

 I-neには、「全社員マーケターであれ」という考え方があります。自分の人生を豊かにするために、マーケティング思考を持って行動してほしいと考えています。そのような意識を社員に持ってもらうことにより、「全社アイデアコンテスト」からヒット商品が生まれたと思います。

 また、私は「周囲の人から素敵だと思われることも立派なマーケティングだ」と思っています。たとえば、異性にモテるためにファッション誌を読んで、インスピレーションをもらうなどして、より素敵な自分になる努力する方もいらっしゃるかと思うのですが、そういった視点を持つことによってその人のライフスタイルが豊かになり、仕事や商品づくりにも落とし込むことができます。


 

ドラッグストアの棚を彩り豊かにしたい


――これから小売店で大きく展開していく上で、商品の面から意識していることはありますか。

 パッケージや店頭POPのデザインを意識しています。特にヘアケアアイテムは店頭認知が重要で、店頭決定率が約80%と非常に高いカテゴリーです。そこで重要になるのが、商品のデザインや容器、販促物、そして置き場所で、それらをハックするイメージです。

 トレンドを生み出す美容開拓層やそのフォロワー層に強く訴求するときは、機能面ではなく情緒的価値が重要です。それを生み出すのに最も大切なのがクリエイティブなのです。「YOLU」や「BOTANIST」は、デザインがよかったから購入したという感想も多いのが特徴です。我々のクリエイティブのトップである今井新CCO(チーフクリエィティブオフィサー)も常に「ドラッグストアの棚をもっと彩豊かにしたい」と言っています。

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