音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #特別編03

マーケティング人材育成のスペシャリストが語る「勝てる組織のつくり方」【音部大輔氏×久保田達之助氏 対談】

 

一人ひとりにタグをつけ、組織内で知識を共有する


――これまでの経験の中で、最も成果を出せた人材育成の仕組みや方法は何ですか。

音部 新刊書籍『マーケティングの扉』の中にも書いたのですが、成長とは、できなかったことができるようになることです。そのためには、実績としての結果も重要ですが、実績の出し方がわかるようになることはそれ以上に重要だと考えます。昨年の実績は今年の実績に直接的な影響を与えませんが、去年実績の出し方が分かっていれば、今年も来年も実績を出しやすくなるでしょう。

自社のマーケター、一人ひとりが1年間で得られる経験値を1とすると、10人いれば組織としては10の経験値が得られるんです。つまり、企業としては10年分の経験値を集めることができます。仮にそれを全員で共有すれば、全員が10の経験値を持てるので、理論上はひとりのマーケターが10年分の成長ができることになりますよね。そこで私は、資生堂の全ブランドのマーケターがそれぞれで経験したラーニングを共有できる仕組みをつくりました。



久保田 その情報共有は、インターネット上でやるのですか?

音部 私も最初はイントラネット上でやろうとしたのですが、誰も見に行かず方針を変えました。方法としてはアナログですが、四半期に1度、それぞれが経験したことを発表する場を設けたのです。各ブランドチームあるいはカテゴリーのリーダーに、最も大きかったラーニングを2分でプレゼンしてもらい、 3分で質疑応答に答えてもらいました。

そうすると、1時間で10人程度の発表を聞くことができます。プレゼン時間は2分なので詳細はわかりません。しかし、あの人がこういうプロジェクトに取り組んでいたから、自分が似たような課題に直面したとき、あの人に聞けば解決できるかもしれないという社内の連絡経路が確立できました。

「以前に発表されていたプロジェクトについて話を聞かせてください」と言われて嫌な気分になる人はあまりいません。快く教えてもらえると、皆がお互いに相談するようになるので、組織の中で知識や経験が循環していくようになるんです。

久保田 社内で一人ひとりにタグをつけるんですね。すごく良いヒントになりました。

当社はまだブランドマネージャー制を導入したばかりで、OJTができるほどのスキルを持った人材がいません。そこで、他社のマーケターと積極的に交流して、その中から学ぶことを勧めています。同業他社から聞いたことを、そのまま実行するとただの真似になってしまいますが、異業種他社であれば応用になります。

私自身も異業種の消費財のマーケターとギブアンドテイクの関係の中で出会い、さまざまな話を聞いています。当社のようにそこまで組織が大きくなく、長年マーケティングに取り組んでいるわけでもないという企業であれば、そのような方法がいいのではないでしょうか。



音部 たしかに、目的を持った交流は有意義ですね。あとは、我々も教壇にたっていますが大学に行ってきちんと教わるというのも手かもしれません。

久保田 そうですね。学びは、いつのタイミングでも重要ですからね。どんどん新しいことが出てくるから、知識を更新しないといけません。

※後編「マーケティング人材の育成に必ず求められる大切な視点とは?【音部大輔氏×久保田達之助氏 対談】」に続く
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