TOP PLAYER INTERVIEW #45

オリオンビール CMOに元スマートニュースの湖東彰彦氏が就任「真の沖縄ローカルビールとして大手4社ができないことにチャレンジする」

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 MHD モエ ヘネシー ディアジオやジョンソン・エンド・ジョンソン、Amazonを経て、3年にわたってスマートニュースでマーケティング部門の責任者を務めた湖東彰彦氏が、2023年4月、オリオンビール 執⾏役員 マーケティング本部 本部⻑として就任した。なぜ沖縄に移住してまでオリオンビールに入社したのか。転職の背景やオリオンビールに秘めた可能性、湖東氏がマーケティングを実践する上での大切なことなど詳しく聞いた。
 
オリオンビール 執⾏役員 マーケティング本部 本部⻑
湖東 彰彦 氏

慶應義塾大学環境情報学部卒。MHD Diageo Moet HennessyやJohnson & Johnsonにて日本、米国、シンガポールを拠点に20年間消費財のマーケティングに従事。2017年からはAmazonジャパンにてAmazon FreshとPrime Nowの事業部長を担った後、2020年4月からSmartNewsに日本マーケティング責任者を経て、2023年4月から現職に就任。
 

オリオンビールを通して沖縄に貢献したい


――スマートニュースを退職され、2023年4月17日からオリオンビールにマーケティング本部⻑として入社されました。転職を決意した理由を教えてください。

 前職のスマートニュース以外は、ずっと外資で働いてきたこともあり、今後のキャリアでは日本の地方の会社に貢献したいという想いを持っていました。特に地方創生、もしくは海外進出のお手伝いができるといいなと思っていたのです。

 一方で、私は母方が沖縄の家系で昔から頻繁に沖縄に足を運んでおり、個人的にもシンパシーを感じていました。その中で、沖縄の会社であり、沖縄に来る人は誰もが知っているオリオンビールでCMOを探しているという話を聞き、「これはチャレンジするしかない!」と思ったのです。

 国内のビールカテゴリを見ると、オリオンビールは大手4社(アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビール)に次いで5位の企業とよく言われます。しかし、4位と5位の間には大きな差が開いているのが事実です。沖縄に来れば、みんなオリオンビールを飲みますし、沖縄に住んでいる人も飲んでくれています。でも、一歩沖縄から出たら、忘れ去られてしまう、そんな弱者のブランドなのです。逆に捉えると、ビジネスとしてチャレンジのしがいがあるブランドだとも言えます。

 私はこれまでのキャリアで常に困難な道を選択してきたので、なんとしてもこの「オリオンビール」というブランドで沖縄に貢献したいという想いを持っています。
 
 
 オリオン ザ・ドラフト(画像提供/オリオンビール)
 

ビールカテゴリは縮小。ただ、大きな伸び代を秘めているオリオンビール


――キャリアの中で常に困難な道を選択してきたというのは、なぜでしょうか。

 新しい環境の中でうまくいったとき、他では得られないほど大きな達成感が得られるからです。新しい環境の中で働き始めたばかりのときは、周囲からお手並み拝見という目で見られ、アウェイの空気感の中で仕事をしていくことになります。

 そのような状況では、まず信頼を築くところから始まり、徐々にビジネスに貢献していく中でさらに大きなことにチャレンジできます。その過程は学びがとても大きく、成功したときの達成感も他では得られないほど大きなものになるのです。拠点を東京から沖縄に移すということも、大きな環境の変化ではありますが、それ自体も面白そうだと思いました。

――CMOとして、具体的にはどのような業務を担当されるのでしょうか。

 簡単に言うと、R&D(研究開発)部門と一緒に商品開発を行うところから、商品やブランドのコミュニケーション策定、そして今後の成長戦略を描いて実行していくところまでが私の責務です。

 オリオンビールは、沖縄ではどこででも買える馴染みのブランドですが、沖縄以外だとそこまで見かけるわけではありません。ビールカテゴリ全体は長年にわたって下落傾向にありますが、全国的な視点から見るとまだまだ知れ渡っていないオリオンビールにとって、例えば、県外のシェアを0.5%から1%にするだけで単純に売上が2倍になるので、伸び代は大きいと言えます。

 そのため大きなビジネスチャンスがあると考えているのは、県外と海外です。コロナ禍を除けば、沖縄を訪れる外国人の数は年々増加しており、2019年に沖縄を訪れた観光客約1000万人のうち、700万人が日本人で300万人は外国人です。

 しかし、2019年に日本を訪れた外国人は3000万人以上で、その中で10%しか沖縄に来てくれていません。沖縄をマーケティングすることによって、もっと外国人観光客を増やし、そこでオリオンビールとの接点を持ってもらいたいと考えています。

 そして、沖縄から帰った先でもオリオンビールが購入できる環境を整えることができれば、そこにもまた大きなチャンスがあると思っています。このように成長戦略については、今後どこにプライオリティを置き、どこに資源を投下していくかということを常に考えてアクションしていこうと考えています。
   オリオン ザ・ドラフト ジョッキで乾杯(画像提供/オリオンビール)

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