TOP PLAYER INTERVIEW #45

オリオンビール CMOに元スマートニュースの湖東彰彦氏が就任「真の沖縄ローカルビールとして大手4社ができないことにチャレンジする」

 

日本で一番売れている「地ビール」であるオリオンビール


――前職のスマートニュースと比較して、同じマーケティング業務でも変化したことを教えてください。

 マーケティングコミュニケーションだけではなく、商品開発の段階からモノづくりにも関われることが大きな違いですね。モノづくりは、過去にジョンソン・エンド・ジョンソンのときにも経験しましたが、自分のつくった商品が実際にお客様の手に届き、使ってもらえるということは、格別な喜びがあります。

 それに、大手4社のビール会社が取り組まないようなことを考えて、実行していくだけでも非常にワクワクしますね。今はクラフトビールが脚光を浴びていますが、クラフトビールを地場のビールと定義すると、オリオンビールは沖縄・名護の工場でチューハイ等の一部製品を除いて全商品が製造されており、日本で最大の「地ビール = クラフトビール」なのです。

―― オリオンビールはクラフトビールと定義できるのですね。

 そうです。オリオンビールは、ある意味「真のクラフトビール」なんです。でも、皆さまはオリオンビールを沖縄の地元のビールだと見てはくれますが、他のクラフトビールに対して抱くような「作り手のこだわり」であったり、「特別感」、「贅沢感」であったりといったイメージはオリオンビールに対しては抱かないですよね。我々は地方の零細企業で、昔から実直に沖縄県民の皆さまの嗜好、そして沖縄の気候に合った唯一のビールを強いこだわりをもって作ってきているので、もったいないなと思います。ただ、逆に考えれば、そこにも大きな可能性があるのではないかと、ワクワクしています。
    

強者か弱者を見極め、自分たちに合った戦い方をする


――湖東さんのこれまでの経験から、マーケティングやビジネスにおいて大切なことは何でしょうか。

 常々見ているのは、自社の立場が強者なのか、もしくは弱者なのかです。そして、成長する上で武器として使える資産は何なのかを客観的に見て、自分たちでコントロールできる、もしくは解決できる課題は何があるかを考えるようにしています。

 さらに、その課題を乗り越えるために、どういう資源や武器が必要なのかを考えます。これはマーケティングに限らず、そもそもビジネスをつくる上で、私が何よりも先に理解しようと努めている部分です。

 冒頭でお伝えした通り、現在のオリオンビールは弱者です。弱者が強者の真似をしても圧倒的な物量で駆逐されてしまい勝ち目はありませんが、弱者なりの戦い方は必ずあります。決して自分たちの力量を見誤らず、それに合った戦い方を選択することが重要であり、それを日々考えています。

 また、チームメンバーによく話しているのは、自分たちでコントロールできないことで悩まずに、コントロールできることに集中しようということです。コントロールできないことの代表格は、天変地異ですね。沖縄は梅雨の時期が過ぎると台風がたくさん来ますが、それによって人出がなくなり、ビールの売上が落ちます。しかし、それはどうにもできない面が大きいので、そこで悩むのは時間の無駄だと思っています。自分の精神状態を安定させるためにも、コントロールできることに集中することが重要だと思っています。

※後編「ドMになって困難な道を選ぶ」オリオンビールCMO 湖東彰彦氏のマーケティング論」に続く
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