TOP PLAYER INTERVIEW #49

JFRカードが選ぶ、クレジットカード会社の差別化と生き残りをかけた道とは?【代表取締役社長 二之部守氏】

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  近年、リテール業界では金融サービスの組み込みの重要性が高まっている。ビジネスモデルの多角化だけでなく、消費者との関係を深化させる鍵にもなっている。2023年11月14日から15日にかけて、リーテル領域のマーケティングをテーマにしたカンファレンス「リテールアジェンダ2023(主催:ナノベーション)」の開催にあたり、独自の戦略を打ち出しているJ.フロント リテイリンググループで、大丸松坂屋カードを発行するJFRカード 代表取締役社長の二之部守氏へのインタビューを実施。昨今の金融業界の動向や特に注力しているポイント、経営やマーケティングで重視にしている考え方ついて詳しく聞いた。
 

金融業界は、ここ10年で大きく変化した


―― 近年、金融業界は大きく変化していると感じます。昨今の金融業界の動向について、二之部さんの見解をお聞かせください。
 
JFRカード 代表取締役社長
二之部 守 氏

1986年3月東京大学文学部卒業、91年5月ニューヨーク大学経営大学院MBA修士課程修了ファイナンス専攻、86年アメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社入社。2000年11月同社グローバル・ネットワーク・サービス 日本/韓国地区副社長。05年8月トラベラーズチェック・プリペイドサービス副社長などの要職を経て、11年9月、ビザ・ワーイルドワイド・ジャパンのビジネスデベロップメントⅡのヘッドに就任。15年10月ビジネス・アドバイザリー・サービス代表、17年2月Origamiアドバイザーを経て、18年3月から現職。

 当たり前の話ではありますが、やはりテクノロジーが金融業界全体の在り方を大きく変えています。どの業界にもいえることですが、金融やクレジットカード業界には、その波が遅れてやってきていると感じます。

 ここ10年でFinTech(フィンテック)という言葉がさまざまな場で聞かれるようになり、スマートフォンやQRコードなどによる決済が普及しました。クレジットカード決済においても、物理的なプラスチックカードが必要なくなるといったように変化しています。

 ただ、モノやサービスを購入して支払いをするという基本的な機能はずっと変わっていません。その手段が時代とともにどんどんと便利になっているので、我々も時代やお客さまのニーズに乗り遅れないようにしなければと思っています。特に決済の面では、セキュリティの重要度がこれまで以上に高くなってきています。

――長期的に見たとき、顧客のニーズはどのように変化していると感じますか。

 最大の変化は、利便性です。今はスマートフォンで簡単にお金の移動ができますよね。また、お得かどうかという点も基本的な価値になっていると言えるでしょう。

 さらに最近感じるのは、社会貢献や推し活という文脈で「自分が好きなモノを応援したい」というニーズです。お客さまは今までのように商品の購入だけではなく、別のところに価値を求めていると感じます。
 

地域を絞った局地的な「お得」と強みを活かした「特別な体験」


――そうした顧客のニーズに対して、JFRカードが特に注力しているポイントはありますか。

 クレジットカードとして基本的な機能である利便性や安全性、セキュリティには注力しています。ただ、それだけでは他社との差別化にはなりません。そこで、異なる価値の提供に力を入れています。

 当社が掲げる差別化のポイントは大きく分けて2つあります。ひとつは、当グループの店舗が位置する限られた地域で「お得」であることです。当グループには、大丸や松坂屋のほか、PARCO、GINZA SIXなどの商業施設があります。これらが位置する、札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡という7つの地域で、お客さまが「お得」を感じられるようにすることです。国内や関東全域ではなく、局地で戦うイメージですね。
  

 もうひとつは、当グループの持っている商業施設やネットワーク、コンテンツなどを利用した「特別な体験」を提供することです。JFRカード独自での取り組みに加えて、我々はターゲットの異なる形態の商業施設を持っていることが強みですので、それらとの共同企画で、他では得られないような体験をお客さまに届けたいと考えています。

 直近であれば、2023年8月に大丸札幌店で、地域の子どもたちに夏休みの職業体験として百貨店の仕事が体験できるイベントを開催しました。これは大丸松坂屋カードの会員限定企画で、QIRA [キラ] ポイントを使うことで特別な体験に参加できるという試みです。

 他にも、百貨店であれば地域の食品や酒造メーカー、着物屋などの各地でさまざまな関係を構築しています。また、PARCOであれば、いろいろなエンターテインメントやeスポーツ、演劇、サブカルチャー的なアートなども提供できるので、そういう部分も絡めて、普段はできない体験を一緒につくっていきたいと思っています。

――7つの地域で局地的に戦っていくということでしたが、この戦略にはどのような意図があるのでしょうか。

 お客さまにどのような価値を届けるかを考えたとき、楽天カードが楽天経済圏をベースに価値を構築してきたように、当社には当グループの強みを生かした価値の構築ができるのではないかと考えました。

 その中で我々の強みは、グループが持っている店舗のブランドやリアルの場所です。7つの地域には、当グループの商業施設が固まっています。たとえば、名古屋の栄には松坂屋とPARCO、そしてBINO(ビーノ)というやや小さめの商業施設があり、その周辺では駐車場やマンションも運営しています。そういった地域内でのシナジーを生むことで、その地域ならではのユニークな価値を提供できると考えています。

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