広報・PR #13

「ジャニーズの代わりは韓国アイドルか?」広告・マーケティング業界への影響を読み解く

前回の記事:
ジャニーズ性加害問題から考える、広告会社の責務とは?
 

ジャニーズ事務所の影響力の減退とその対策


 前回の「ジャニーズ性加害問題から考える、広告会社の責務とは?」で寄稿したように、ジャニーズ事務所の創業者である故・ジャニー喜多川氏に対する性加害問題が表面化することで、多くの企業が広告契約を見直している。特に上場企業で、この傾向が顕著だ。

 多数の企業がテレビCMの放送の停止や中止を検討しており、新たな契約を結ばない方針を採っている。帝国データバンクの調査によると、2023年9月20日時点でジャニーズ事務所のタレントを広告に起用していた上場企業のうち、17社がCMの放映を中止、または停止している。さらに15社は、契約期間満了後に契約を更新しない方針を明らかにしている。

参考:「ジャニーズタレント」CM等起用の上場企業動向調査(2023年9月20日時点)

 この状況は広告・マーケティング業界にとって重大な課題となっており、緊急に対策を講じる必要がある。たとえば、毎年大晦日に放送されるNHK「紅白歌合戦」のような高視聴率の番組に、自社とテレビCM契約を結んだタレントが出演することは、そのブランドや商品への注目度を高める大きなチャンスである。しかし、ジャニーズ事務所の影響力が低下すれば、このような番組でのブランド露出の機会が減少し、それがROI(費用対効果)にも影響を与える可能性がある。

 この状況に対処するためには、他の影響力の高いタレントや文化イベントに焦点を移し、多角的なブランド露出戦略を構築することが必要となる。まずは3つほど多角的なブランド露出戦略を紹介しよう。

■複数のタレントやインフルエンサーと提携する
 ひとりのタレントやグループへ依存するリスクを分散し、市場変動に対応できる体制を整える。データ分析を用いてタレントを選定することで、効果的なブランド露出が可能となる。

■タレント契約の短期化
 長期契約による高コストと柔軟性の欠如という課題を解消する。短期契約によって、市場の急な変化に即座に反応できるようになる。

■データ主導の選定
 タレントの選定においても、SNSのフォロワー数やエンゲージメントレートなどの定量的指標を活用し、マーケティング戦略の精度を高める。
 

韓国アイドルの台頭とその影響から考えるべきこと


 韓国アイドルの台頭とその影響について考察するとき、逃せないのは日本のジャニーズ事務所の影響力に生じている変化である。特にアジア市場の若年層において、韓国アイドルが高い影響力を持っていることは明らかである。韓国アイドルはSNSを駆使したマーケティング戦略で、ファンとのエンゲージメントを高めている。

■SNS活用
 InstagramやX(旧Twitter)などのプラットフォームでのコンテンツは、ファンとの直接的なコミュニケーション手段となって、高いエンゲージメントを得ている。

■国際的アピール
 多言語によるコミュニケーションや洗練されたビジュアルによって、アジアだけでなく世界的な人気を博している。

■コンテンツマーケティング
 ミュージックビデオやバラエティ番組への出演、コラボレーションなど、多角的な露出でファンとの継続的な関係を構築している。

 韓国アイドルの台頭は、日本の広告・マーケティング業界においても無視できない。韓国経済研究院の調査によれば、2017年から2021年までの日本での韓流ブームの経済効果は約4兆380億円と評価されている。

 特にK-POPアーティストが主要な原動力となっており、男性アイドルグループNCT 127のユウタ氏が、Instagramでのフォロワー数において日本の男性俳優である山下智久氏を上回るなど、SNSでの影響力も大きい。

参考:韓流ブームの経済効果、4兆380億円 17~21年 韓国研究機関
参考:NCT 127・YUTA、インスタフォロワー日本人男性タレント1位に 自然体ラジオも人気

 このような状況から、ジャニーズがかつて握っていた影響力が次第に薄れて、「韓国アイドルがジャニーズに取って代わる日が来るのか?」という煽り気味の問いが広告・マーケティング業界に投げかけられている。

 実際、ジャニーズ事務所の影響力の減退と韓国アイドルの台頭は、業界に新しい戦略と方向性を必然的にもたらすだろう。これらの動きを深く理解し、戦略的に対応する能力が現代の広告・マーケティング業界において不可欠なのだ。

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